仮面ライダーウィザード第三十五話

平成「仮面ライダー」第十四作「仮面ライダーウィザード」。
第三十五話「空の向こう側」。
ソラ(前山剛久)が他のファントムとは異なり、人間の心を保ったままファントムの身体を持たされているのである以上、グレムリンと化してから犯した悪事に近いことを、人間だったときにも既に犯していたのではないのか?という疑惑は、先週の第三十四話の示唆するところではあったが、事実として突き付けられてみると予想以上で、流石に戦慄せざるを得ない。
ソラの前身となったゲートの滝川空は連続猟奇殺人犯だったらしいのだ。
美容師だった彼には長い黒髪と白い服の似合う恋人がいたが、何事かあったらしく、彼は酷くも捨てられた。その瞬間、彼は復讐心に憑りつかれた殺人者と化した。相手が己を捨てるのではなく、己が捨てるのでなければならないと考え、己を捨てようとした相手の黒髪を切り捨てて捨て返した。「仮面ライダー」は子供のための番組であるからそれ以上の描写はなかったが、生命をも捨て、身体をもどこかへ捨てたのだろうことは明白だろう。以来、滝川空は美容師として多くの客に接してゆく中でも、長い黒髪と白い服の女子を見付けるや復讐心を再燃させ、犯行を重ねていた。
警視庁国家安全局〇課の木崎警視(川野直輝)が部下に調べさせ、大門凜子(高山侑子)と操真晴人(白石隼也)に明かした情報によると、美容店で滝川空の客だった者の中には現在、行方不明になっている者が何十人もいたらしく、しかも行方不明者の全員が長い黒髪の持主で、行方不明になったときには白い服を着ていたらしい。行方不明ということは現在も発見されていないということだ。発見された暁には世間に戦慄を惹起して騒然とさせるに相違ない。
滝川空が絶望させられてファントム化したのちも完全にファントム化するのではなく人間の心をそのまま保っているのは、思うに、彼の邪悪な復讐心が、いかなる絶望をも軽く超克する程に強かったからだろう。最初に恋人に捨てられたとき、悲しんで絶望しつつも絶望を復讐心へ変えた悪魔のような心がファントム化をも妨げて人間の心を保持した謎のファントム、ソラを生んだ。だが、その心は既に、いかなるファントムも敵わない程の邪悪な心だったのだ。
ところで、ソラは極めて重要な情報を提供した。
川でソラと操真晴人がソラの失くした帽子を探していたとき、コヨミ(奥仲麻琴)を「人形」と形容したソラに対して操真晴人が「人形じゃない!人間だ!」と反発し、「コヨミはファントムを生んで抜け殻になったゲートなんだ」と述べたのに対して、ソラは呆れ果てたように「それは変だね」と云い、「ファントムを生み出して体が残るなんて、あり得ないよ」と説明した。
そしてグレムリンとウィザードとの死闘のあと、不利になりつつあった戦闘を切り上げて逃げ去ろうとするグレムリン=ソラは、ウィザードとの決着の時期を、「次は僕が賢者の石を手に入れたときに」と予告した。この語によってウィザード=操真晴人は「賢者の石」というものが存在するらしいことを知った。
元ホスト風の写真家ファントム小須田明人(城咲仁)をビーストの力で無事に退治した仁藤攻介(永瀬匡)が、面影堂で、奈良瞬平(戸塚純貴)とともに人気モデルの清水千秋(新木優子)を囲んで談笑していた間、操真晴人は大門凛子と一緒に川原で今回の事件について反省していた。そこへコヨミが迎えに来て、昼食の準備が出来ていることを告げた。昼食はカツ丼と天丼。「どっち?」と聞いた彼に「どっちも」という答え。