旅行記二/朝倉彫塑館/谷中銀座/出張完了

旅行記二。
朝七時半頃、ホテルの食堂で朝食。九時頃に外出。上野駅で乗車して日暮里駅で降車。谷中の台東区立朝倉彫塑館を見物。
朝倉彫塑館は、近代彫刻の巨匠、朝倉文夫のアトリエと邸宅がそのまま記念館、美術館として保存されていて、建築は国の有形文化財として登録され、庭園を含めた全体が国の名勝に指定されている。確かに、小さな庭園と一体化した和様の住居とモダンなアトリエは、文人趣味に富んだ家具とともに、仙境の楼閣の観を呈していて、真に傑出した芸術家の精神を伝える比類ない史跡に他ならない。最近まで改修工事のため永らく休館していたが、なるほど、これ程にも複雑な建築を維持しつつ、往時の輝きを復元するのは並大抵ではない。書斎の壁を埋め尽くす膨大な書籍の内容にも圧倒されるが、これは生前の配置を伝えているのだろうか。館内の随所に朝倉文夫の彫刻が展示されているが、ことに魅了されるのは猫の彫刻の数々。大きな犬の彫刻も良いが、猫の作品群は愛猫の母子の様々な姿を表現していて楽しい。
彫刻や美術を愛する人のみならず、建築を愛する人、庭園を愛する人、そして猫を愛する人にも、朝倉彫塑館は心地よい場所であるに相違ない。
十一時半頃に朝倉彫塑館を出て、谷中銀座を歩き、色々な猫を見たあと、三百円の弁当を購入して公園で昼食。日暮里駅から渋谷駅へ移動し、文化村の画廊で絵を見て時間を調整したのち、昼二時十五分頃までに仕事場へ移動。
二時半に始まった会議は夕方五時半頃に終了。これで出張は無事完了。
渋谷駅から上野駅へ移動し、駅に近い食堂で夕食を済ませて夜七時頃にはホテルへ帰った。宿泊室へ帰るや眠くなり、寝て、起きて朝倉文夫の『我家吾家物語』や『私の履歴書』を読んでいる内に再び眠くなり…というのを繰り返し、起きたのは翌朝五時半頃。ゆえに十二月六日午前六時四十八分に記之。