弱くても勝てます第八話

土曜ドラマ「弱くても勝てます」第八話。
前回に続いて物語の展開の鍵を握ったのは小田原城徳高等学校野球部一年生の光安祐太(平岡拓真)と、三年生でありキャプテンである江波戸光輝(山崎賢人)。そして江波戸光輝の傍らには岡留圭(間宮祥太朗)。
誰がどう見ても頼りない江波戸光輝は、本人も己に自信を持っているわけでもなく、責められれば直ぐに謝ってしまう。彼とは正反対であるのが、誰に対しても自信満々、強気な口調で、まるで攻撃しているかのような言葉を発してしまう岡留圭。かつて中学生だったとき江波戸光輝は岡留圭に虐められたと感じていて、ゆえに今なお、当時の恐怖心を拭い去り切れてはいない。とはいえ岡留圭は実は虐めていたつもりではなかったらしく、江波戸光輝がそう感じていたことを今になって知って、内心は深く反省しているらしい。
だから何とかして仲良くなろうとして度々親しく接しようとしてきた。
今回の第八話では、江波戸光輝が皆から責められる場面が来る度に、岡留圭は江波戸光輝を擁護し、むしろ責められるどころか褒められるべきであることを主張し続けた。ところが、そのように岡留圭から守られる度に、江波戸光輝は岡留圭に軽く反発し続けた。
この意外な反応は、岡留圭をさらに深く反省させることになったに相違ない。
野球の練習の終わったあとの、夕陽に照らされた薄暗い野球部室の中で、ベンチに坐してユニフォームを脱ごうとしていた江波戸光輝に、暗い表情をした岡留圭が改めて本気で謝罪しようとした場面は、両名の間の複雑な思いの交錯を感じさせて見応えがあった。
江波戸光輝に本気で嫌われているのだろうか?と感じた岡留圭からの問いに、江波戸光輝は、岡留圭を嫌っているのではなく、苦手に思っているだけであると応えた。嫌いではなく、好きな部分もあるが、何となく苦手であるという複雑な感情。これは多分、自信満々強気な姿勢が苦手であるとか、よく通る明朗な声の発し方が苦手であるとか、そういったことだろう。これは性格の問題であり、俄かに解決できるわけではない。だから岡留圭も、己の性格を直ぐに変えることはできないと反応したが、これに対しても江波戸光輝は、今の性格を変える必要なんかないと即答した。互いに今のままでいたいというのが江波戸光輝の回答であり、ゆえに彼は、岡留圭には悔い改めて欲しくはないし、あらためて謝って欲しくもないと思っている。
だが、これは要するに、弱気な江波戸光輝を強気な岡留圭が攻撃するような関係、江波戸光輝にとって苦手な人間である岡留圭が親しく接してくるような困った関係を、江波戸光輝は嫌いではなく、今まで通り続けたいということだろう。敢えて大袈裟に云ってしまえば、究極の愛とさえ云えなくもない気がする。
率直に云って、今や江波戸光輝と岡留圭の関係が余りにも面白くなってしまい、赤岩公康(福士蒼汰)と白尾剛(中島裕翔)と樽見柚子(有村架純)の三角関係が脇役みたいに見えてくる始末。