新番組=仮面ライダードライブ第一話

平成「仮面ライダー」第十六作「仮面ライダードライブ」。
第一話「俺の時間はなぜ止まったのか」。
仮面ライダーの物語に主要な登場人物として警察が登場する例は少なくないが、今回は主人公が警察官。しかも少し前までは警視庁捜査一課の刑事。半年前に悲惨な事件を経験して以降、気力を失い、警視庁特状課へ転出させられて出世コースから外れてしまったとはいえ、持ち前の頭脳と勘の良さは今なお失われたわけではなく、時に覚醒することがある…と書けば、普通の刑事ドラマとしても成立しそうだが、この主人公、警視庁特状課巡査の泊進ノ介(竹内涼真)の覚醒を強烈に促したのが、奇妙な姿をした警察車両「トライドロン」の声の主。
声の主は実は車両ではなく、車内に配備されていたベルト(声:クリス・ペプラー)。「ベルトさん」と呼ばれる。人間ではない何者かが主人公に色々話しかけながら指令を出して戦闘を導いてゆくのは、例えば「仮面ライダーオーズ」におけるアンク(三浦涼介)で馴染みがあるが、今回は、仮面ライダーに変身するためのベルト自体が主人公の相棒になった点で新しい。
さらに、仮面ライダードライブと「ベルトさん」の秘密を知る仲間として、同僚の詩島霧子(内田理央)が第二の導き手をつとめる点も新しいかもしれない。仮面ライダー本人よりもその後方支援をつとめる女子の方が戦闘に巧みで頼もしい…という事例としては、これも「仮面ライダーオーズ」の、後藤慎太郎(君嶋麻耶)に対する里中エリカ(有末麻祐子)を挙げることができるが、今回は、云わばエリカとアンクが一緒になって後藤慎太郎を支援しているに等しい。そこが面白い。
主人公の仕事仲間も楽しい。彼の所属の部署は、警視庁特状課。特状課とは聞きなれない語だが、番組公式サイトによれば、「特殊状況下事件捜査課」の略称。
怪現象を調べる課であるらしく、警視庁内では馬鹿にされているようだが、実のところ、予て人々の動作が急に重く鈍くなって、その隙に悲惨な事態に見舞われる怪奇現象が頻発していて、その対策こそが今や警視庁の喫緊の課題になってもいた。世間ではそれを「どんより」現象と呼び、特状課ではそれを「重加速」と命名したが、半年前には世界各地でそれが同時多発して、まさしく世界の終わりが来たかのような恐怖と不安と無力感を人々の間に惹起していた。主人公、泊進ノ介から気力を奪ったのも、この半年前の「グローバルフリーズ」に他ならなかった。
そのようなわけで、特状課の果たすべき役割は極めて大きくなっているはずだが、いかんせん怪奇現象を扱う部署ということで庁内では軽んじられていて、半年前に意欲を喪失した泊進ノ介も含めて、庁内で使い物にならないと判定されてしまった人々が集められているらしい。しかし、何か一癖ありそうで、単なる昼行燈ではなさそうであると感じさせる顔触れでもある。その筆頭が、特状課長の本願寺純(片岡鶴太郎)。見るからに只者ではない。しかも今回は、往年の手妻の名手、浦辺粂子みたいな声と口調で愚痴をこぼしていた。
泊進ノ介に敵対するのは「ロイミュード」の首領、ハート。
演じるのは蕨野友也。宮崎県都城市出身の俳優で、二〇〇八年の「ごくせん」にも生徒役の一人として出演していたが、肉体派でもあり、「オールスター感謝祭」の赤坂五丁目マラソンで優勝したのは記憶に新しく、いつかは特撮ヒーロードラマにも出てくるに相違ないと予想してはいたが、満を持して、遂に出演を果たした。注目に値しよう。