きょうは会社休みます第三話

水曜ドラマ「きょうは会社休みます。」第三話。
青石花笑(綾瀬はるか)は田之倉悠斗(福士蒼汰)を誤解し、田之倉悠斗も青石花笑を誤解して、両名の関係は一体どうなるのだろうか?と視聴者に手に汗握らせる展開。とはいえ青石花笑は田之倉悠斗を疑ったり憎んだりしたわけではなく、あくまでも自分自身の至らなさを申し訳なく感じていたと云えるし、田之倉悠斗も青石花笑に疑問や不信感を抱いたわけではなく、あくまでも己の何が駄目で青石花笑を怒らせたのかを考え込んで悩んでいたように見受ける。青石花笑は田之倉悠斗を嫌いになんかなれなかったし、田之倉悠斗も青石花笑と別れたくはなかった。二人の本心が最後に明かされて、全てが丸く収まった。今週も実に良い話だった。
しかし考えてみれば、この展開も結末も全ては朝尾侑(玉木宏)の言動に起因すると云うも過言ではない。青石花笑に対して田之倉悠斗の思いを疑わせるように仕向け、青石花笑を挙動不審にしたのは朝尾侑の「くれぐれも重い女にならないように気を付けて!」という罠のような忠告に他ならなかったが、反面、青石花笑に対して田之倉悠斗への思いを改めて自覚させたのも朝尾侑の「まだ彼のこと好きなの?」という真剣な詰問に他ならなかった。原因を作った悪魔であり、結末を導いた天使でもあるが、朝尾侑は決して青石花笑を翻弄しようとしていたわけではなく、あくまでも本気で口説こうとしていた。田之倉悠斗に対する彼の意地悪な攻撃が、そのことを物語っていた。本気で仕掛けていたのに裏目に出た格好だったわけで、その報われなさのゆえに、憎めない人物になっている。
この報われなさに関して面白いのは、田之倉悠斗が青石花笑の重さをこそ愛していたということ。普通の若い男子が期待している(と朝尾侑が述べていた)軽い女を、田之倉悠斗は求めていなかった。そして多分、この一点において田之倉悠斗と朝尾侑には似たところがあると見てよいのかもしれない。
全体としては手に汗握る話だった中で、笑いどころが多数あったのも先週と同じ。青石花笑の今週の妄想は時代劇。急用というのは何かを聞かれて急用の中身ではなく「急な用事のこと」であるという語義を応えたり、差し出した「シュシュ」に何の意味があるのかを問われてその用途を応えたりしたのも、青石花笑の面白いところだが、さらに強烈だったのは、ゾンビという存在について独自な深い解釈を持っていたところ。ゾンビという存在に不屈の精神を見出す人は珍しいのではないだろうか。
大城壮(田口淳之介)は今回も青石花笑の変化に敏感だったが、反面、田之倉悠斗がその変化と無関係ではあり得ない点についてはどういうわけか鈍感で、全く気付いていなかった。
鮫島栄彦(水上剣星)の秘密を加々見龍生(千葉雄大)は抉り出してしまったが、実際には、その秘密に気付いていない者は一人もなく、誰もが気付いていながら敢えて気付いていない振りをしているだけであるのを、加々見龍生は無神経にも云い放ってしまっただけだった。誰も気付いてはいないだろうと思い込んでいるのは、ことによると鮫島栄彦と加々見龍生だけであるのかもしれないという奇妙な状態。