怪盗ジョーカー第五巻まで
小学館てんとう虫コロコロコミックス「怪盗ジョーカー」(たかはしひでやす作)を第五巻まで読んで思うに、アニメの「怪盗ジョーカー」が面白いのは原作が面白いからこそであるのと同時に、アニメ化にあたって原作の面白さを最大化し得るための幾らか大胆な改変を施したことも有効だったように見える。原作が「別冊コロコロコミック」、次いで「月刊コロコロコミック」で連載され始めてから七年後のアニメ化であり、云わば作品として成熟したのちのアニメ制作であるから、良い意味で「後知恵」があったと云える。
主人公ジョーカーや相棒ハチ、仲間のスペード、クイーン、ダーク・アイ、ロコ、師のシルバーハート、敵のシャドウ・ジョーカー等にどんな過去があったのかを全て踏まえてそれぞれの人物像を描くことができたし、過去の因縁を軸にして濃密な物語を作ることもできた。その上で、登場人物を思い切り絞り込み、同一人物を繰り返し登場させて、分かり易く馴染み易い構図を作り出した。鬼山警部は原作では第二巻で初めて登場し、ミスター金有は第一巻の第一話で登場したあと、第五巻までの間には再び登場することがないが、アニメ版では鬼山警部を最初から登場させ、金有を繰り返し登場させたことで、もはや登場しただけで笑える程の存在(所謂「出オチ」)と化している。
アニメ化に伴う改変で最も良い点は、ジョーカーの日常生活を常に描こうとしているところではないだろうか。少なくとも第五巻までの間の原作では、ハチが炊事や掃除の名人で、特に料理の腕前によってジョーカーの「胃袋を掴んでいる」という場面はないように見える。第一巻の第一話で、ジョーカーは偶々出会った少年忍者ハチに見どころを感じて「どうだい?次の仕事もまたオレと組んでみないか?」と声をかけて自ら相棒にしているが、アニメ版の第一話では、ハチがジョーカーの才能に惚れ込み、弟子入を志願し、なかなか受け入れてもらえそうになかった中で家事全般を引き受け、ことにジョーカーの大好物カレーライスを拵えてジョーカーを魅了したことで一番弟子にしてもらっている。そしてそれ以降、ジョーカーとハチの日常生活が毎回の話の基本になっているが、結局はそのことが、ジョーカーと仲間たちの天涯孤独の境遇と、新しい家族としての仲間たちへの思いを浮かび上がらせることに繋がっている。
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