仮面ライダーゴースト第十話

平成仮面ライダー第十七作「仮面ライダーゴースト」。
第十話「集結!15の眼魂!」。
天空寺タケル(西銘駿)は己の蘇生のために英雄の眼魂十五個を期限までに集めなければならないが、対するに彼の幼馴染みの「マコト兄ちゃん」ことスペクター=深海マコト(山本涼介)は、眼魂と化している妹の深海カノン(声=工藤美桜)を人間として再生させるために眼魂十五個を集めなければならない。深海マコトが戦うのは妹のためではあるが、それは同時に、妹を大切に思っている己のためでもある。対するに天空寺タケルが戦うのは己のためでなければならないが、生憎、彼は眼魔の餌食になろうとしている気の毒な人々を見殺しにはできない性分であり、結局、己の事情を後回しにしてでも他の人々のために戦ってきた。このように、天空寺タケルと深海マコトの間には、戦う目的に関して見事な捻じれが生じていた。
しかるに今回、この捻じれは奇妙な解決を見た。天空寺タケルは、幼馴染みの深海カノンを救うために深海マコトに協力したいと決意し、対するに深海カノンは、己のために兄が天空寺タケルに敵対せざるを得なくなっていることを苦しんだ挙句、もはや己の復活なんか望んでいないこと、むしろ兄が天空寺タケルと仲よくなることを望んでいることを兄に告げた。
本来、天空寺タケルこそ己のために戦い、深海マコトが人のために戦っているはずだったが、結局、天空寺タケルは己のためではなく人のために戦い、深海マコトは己だけのために戦っている格好になった。これは、目的を見失いがちだった天空寺タケルが目的を明確化し、目的へ向けて直進してきた深海マコトが目的を見失ったということでもある。今まで深海マコトは天空寺タケルに対して立場の表明を求めてきたが、今や立場の表明を求められているのは深海マコトの側に他ならない。
しかも、ここに来てさらに、両名に関係の再構築を迫る事態が生じた。今まで一連の「不可思議現象」を仕掛けてきた西園寺主税(森下能幸)が、混乱に乗じて両名の集めていた英雄の眼魂を全て奪取し、ついに十五個の眼魂を独占したから。
西園寺主税は天空寺タケルと深海マコトから眼魂を奪取するために作戦を仕掛けてはいたが、それは成功してはいなかった。狙いが外れていたにもかかわらず、狙っていた眼魂を獲得できたのは、天空寺タケルと深海マコトの間の混乱がジャベル(聡太郎)によって拡大されていたところに、両名の油断が生じていたから。漁夫の利でしかなかった。
ジャベルは眼魔界の「大帝陛下」に仕えている。「大帝陛下」の御子がアラン(磯村勇斗)だが、どうやらジャベルはアランの忠臣ではない。なぜならジャベルの言によればアランには「兄上」がいて、ジャベルは「兄上」の指示に従っているから。「大帝陛下」と「兄上」が一枚岩であるのかどうかは定かではないが、「大帝陛下」と「兄上」がアランを信用していないらしいことは明白。ゆえにジャベルはアランに対する「御目付役」を務めているが、反面、ジャベルはアランを裏切る格好になっていることを心苦しく思っていると見受ける。ユグドラシルロイミュードに続いて今回またしても悪役の側に複雑な事情があるのか。