仮面ライダーゴースト第二十二話

平成仮面ライダー第十七作「仮面ライダーゴースト」。
第二十二話「謀略!アデルの罠!」。
魔界で「大帝陛下」と呼ばれているアドニス(勝野洋)は第一王子である王世子アデル(真山明大)によって暗殺されたが、アデルはその罪を第二王子のアラン(磯村勇斗)に着せた。アデルとアランの姉にあたる王女アリア(かでなれおん)はアランがそのようなことをするはずがないと認めていて、恐らくはアデルこそ下手人ではないかと疑っているのだろう。しかし大帝位を継承したことを広く宣言したアデルの命令が既に眼魔界を動かし始めていて、変化は止められようもない。
既に眼魔界の統治において実権を握っていたアデルが、どうして謀反を働いたのか。
一つには、アドニスもアリアもアランを愛していて、ことにアドニスがアランに期待している様子だったことに、アデルが嫉妬したということがある。これは一面では、「大帝陛下」の愛情が己よりも弟アランに注がれていることに単純に嫉妬したということだが、他面では、その愛情のゆえに大帝位が己ではなく弟アランに譲られるかもしれないことを心配したということでもある。
もう一つの理由としては、アデルがこれまで目指してきた「完璧な世界」の構想が、もともとはそれを構想した張本人であるはずのアドニスにおける心境の変化によって見捨てられつつあるのかもしれないことを予感し、恐れたということがあろう。アデルは不完全な世界としての人間界を無用の存在と考えているが、どうやらアドニスは必ずしもそのようには考えていなかったようであり、だからこそ人間界に度々滞在してきたアランに何か新しい考えが芽生えているのかもしれないことを期待していた。アリアもまた、人間界から来た深海マコト(山本涼介)と深海カノン(工藤美桜)の兄妹を好ましく思い、この兄妹と親しくしていたアランに期待していた。アデルの政策はどうやら眼魔界の帝室において孤立していたらしい。このことはそのまま、アデルがアランに嫉妬せざるを得なかった理由の理由でもある。そして己の政策こそが真実の道であることを疑いたくないアデルは、己の道を揺るがし脅かしつつある原因をアドニスと見定めた。
こうして見てみれば、眼魔界が人間界と同じく不完全であると判る。人間が合理性を欠いて不完全であるように、眼魔もまた合理性を欠いているとしか云いようがない。今までアランや他の眼魔たちが偉そうに述べていたこととはあまりにも話が違っている。アランに対する天空寺タケル(西銘駿)の怒りは正しい。しかし、一度この物語の世界の外の現実界へ目を転じるなら、これは人間界の現実の正確な写しであるとも云える。例えば、人権派を称する人々こそが最も酷く人権を蹂躙する人々である場合のように。