旅行記一/六本木の国立新美術館における新海誠展/蔵前のホテルから浅草寺まで歩く

 旅行記一。
 東京で出張の仕事を予定しているので、休日を利用して早めに東京へ移動しておく日。
 昨夜かなり早めに寝たので今朝かなり早めに起きて、急ぎ準備を整え、十時頃に外出。道後温泉駅前でリムジンバスに乗り、十一時には松山空港へ到着。昼一時十五分には羽田空港に到着。しかし、ここで仕事。携帯電話メール受信を確認し、二箇所に電話して月末の日程調整。その過程で新たな指示を受けたので慌てたが、日程だけ定めることができたので幸い。それが一時五十五分頃。少し安心し、漸く羽田空港から京急線で出立。大門駅で都営地下鉄大江戸線に乗り換え、六本木駅へ。ウォークマンRADWIMPS作曲「はじめての、東京」や「憧れカフェ」、「奥寺先輩のテーマ」等を聴きながら東京ミッドタウン脇を通過。
 三時十分頃、国立新美術館へ到着。現在開催中の「新海誠展」を鑑賞するため、ここに来た。券売所には行列ができていたが、どうやら「安藤忠雄展」の券を求める人の方が多かったらしい。折角であるので両方とも観ておきたいと思い、両方の券を購入。両方とも百円割引料金になった。入館して先ずはコインロッカー探し。幸い、正面玄関から入って右手の一番奥にある最も大きなロッカーが空いていて、大きな荷物も上着も全て収めることができた。これで身軽になって二階の奥の展示室へ行き、先ずは「新海誠展」を鑑賞。
 冒頭の映像に感動したのち、入口へ戻って音声ガイドを借りた。音声ガイドを使用するのは生涯で二度目。一度エは大昔で、あまり面白くなかったし便利でもなかったが、最近は機器が使い易くなっている。しかも今回の音声ガイドで解説役をつとめるのは新海誠の大ファンであるのみならず「君の名は。」で立花瀧を演じて新海誠作品の中の人にまでなってしまった神木隆之介。聴かないわけにはゆかない。
 展示の内容は流石、国立美術館で開催するに相応しく、「ほしのこえ」から「君の名は。」まで六作品それぞれの絵コンテ、ビデオコンテ、設定、原画、背景美術、本編映像(抜粋)等の資料のみを見せることに徹底していて、実に好ましかった。スタジオジブリであれば物語の世界を原寸大再現するところだろうが、あれは貴重な資料そのものへの集中力を低下させるだけで、美術館に相応しい展示手法ではない。アニメーションの展覧会を美術館(博物館)で開催する際には、今回のような生真面目な展示こそが今後の基準になるべきであると思う。
 もう一つ面白かったのは、新海誠が制作に使用してきたパソコン等をそれぞれの作品の資料と一緒に展示していたこと(「ほしのこえ」ではパソコンのモニターを使用して映像を上映していた)。もともと新海誠は「ほしのこえ」を一人で制作して発表し、注目を集めた人。アニメーション映画というものは集団でしか制作できないものであるという業界の常識を覆した人だったが、そのような驚異の制作を可能にしたのはパソコンの発達だった。そしてパソコンの進歩は常に、新海誠の作品の質の向上を支え続けてきた。それを踏まえて今回の展示では、新海誠の年譜にもパソコンの発達に関する事項が大いに記載されていた。興味深かった。
 合間には、大成建設CM等の小品(しかし高水準の傑作!)の展示もあったし、愛読書の展示もあった。しかし展示の主役は「ほしのこえ」、「雲のむこう、約束の場所」、「秒速5センチメートル」、「星を追う子ども」、「言の葉の庭」、そして「君の名は。」の大作六作品。幸い、全て鑑賞済ではあるが、多分、鑑賞済でなかったとしても展示を楽しめて、しかも鑑賞したくなっていたろう。
 閉館時刻まで三時間もない中、急ぎ足に観て回っていたつもりだったが、「君の名は。」の展示に達した時点で既に六時前になっていた。時の経つのも忘れる程に没頭していたらしい。展示の最後を飾る「クロージングムービー」も素晴らしかった。六作品の様々な人物の動作、表情、言葉、そして風景が、まるで一つの思いを表しているかのようだった。「ほしのこえ」でノボルを演じた鈴木千尋の美声も聞こえて、嬉しかった。
 出口とグッズ売場の間にはフォトロケーションがあった。「君の名は。」に登場した国立新美術館の写真展「郷愁」における糸守町の風景写真展示を再現していた。その全貌を撮影しておきたかったが、展示に見入っている人々がいたので断念し、一部のみ撮影しておいた。
 グッズ売場をじっくり見る余裕はなかったので図録と図録用バッグと「君の名は。」グッズのマッキーのみ大急ぎ購入して会場を出た。
 安藤忠雄展を観る時間はなく、日展を観る時間もあるはずがなかったのは残念だが、それでも大いに満足して国立新美術館を出て、再び東京ミッドタウン脇を通過し、六本木駅から都営地下鉄大江戸線蔵前駅へ。
 途上には両国駅を通過した。そもそも東京へ来たのは約七個月振りのことで、前回来たのは三月十九日、両国国技館における映画「ハイ☆スピード!」のイヴェント「岩鳶中学水泳部記録会お疲れ様パーティ」に参加したときのことだった今日、国立新美術館の「新海誠展」のクロージング映像で「ほしのこえ」における鈴木千尋の美声を聞いて両国の夜イヴェントにおける鴫野貴澄役の鈴木千尋を想起し、色々懐かしんでしまった。
 蔵前駅を出てみれば雨が降っていた。大急ぎホテルへ入り、暫し休憩したのち、ホテル内の食堂で夕食。雨を避けるためホテル内で夕食を済ませたが、済ませてみれば少し強気になって結局は外出。周辺を散歩してみれば、高名なバンダイの社屋があった。仮面ライダービルド等のポスターが掲示されていた。さらに歩いて、浅草寺の雷門へ。仲見世を歩き、参拝。雷門で何か物足りない気がしていたが、なるほど、門前の柳の巨木が切られていたからか。参拝を終えてホテルへ帰った。