義経

NHK大河ドラマ義経」第五話。
五条の橋の上での遮那王滝沢秀明)と武蔵坊弁慶松平健)との対決。巨大な月に照らされ、桜の花が吹雪のように舞い散る中、踊るように跳躍する遮那王。なかなか面白かった。それ以上に面白かったのは、遮那王と遭遇して以来、弁慶はその謎の美少年のことばかり思い、食欲をも失くしてヤツレ果ててしまっていたことだ。一目惚れなのか。流石マツケン
だが、見どころはそれだけではなかった。六波羅第における二つの会議の場面がそれぞれ面白かったのだ。一つ目。平徳子中越典子)の入内を確実に実現するため、平時子松坂慶子)は時忠室領子(かとうかずこ)・重盛室経子(森口瑤子)・知盛室明子(夏川結衣)・重衡室輔子(戸田菜穂)を召集して策を練っていた。当時の宮廷貴族の社会が女性同士の人脈によって動いていたのは近年の研究者が指摘するところでもあり、そういった史的な観点からも面白かった。
二つ目。かつて源頼朝池松壮亮)が平清盛(渡哲也)を騙していた事実が明らかになったのを受けて、源氏への今後の対策を練るため、平重盛勝村政信)が平時忠(大橋吾郎)・平頼盛三浦浩一)・平宗盛鶴見辰吾)・平知盛阿部寛)・平重衡細川茂樹)・平盛国平野忠彦)を召集した。小松内府重盛役の勝村政信は以前よりもさらに貫禄を増して、いかにも大臣御影にでも出てきそうな感じに見えた。見事だ。知盛役の阿部寛が平家一門随一の知将の風格を備えていたのは予想通り。阿部寛は一九九五年NHK大河ドラマ八代将軍吉宗」では老中松平乗邑の役を、いかにも幕閣の知性派に相応しく堂々演じていた。
ところで、この会議の席上、宗盛は源氏の血を継ぐ遮那王が存命であることの危険性を特に強調していた。これは彼の政治的な判断力の確かさを物語るだろうか。無論そうではない。彼は少年時代の屈辱を今なお記憶していたに過ぎない。彼の発言に対し小松重盛が複雑な表情だったのは、そのことを瞬時に察して一門の行く末に不安を抱かざるを得なかったからだろう。
平安京の不良たちも面白い。五足(北村有起哉)は特に目を惹くが、大日坊春慶(荒川良々)の不気味な恐ろしさにも圧倒させられる。
それにしても惜しく思うのは、静御前の役にどうして上戸彩を起用しなかったのか?ということだ。今回のドラマのために創作された人物「うつぼ」のような野性的な少女の役は確かに上戸彩の最も得意とするところだから、上戸彩が「うつぼ」を演じること自体には何の不満もない。それどころか大賛成でさえある。問題なのは石原さとみだ。現在放送中のTBS系ドラマ「H2」の春華の役では素晴らしく愛らしく魅力的なのに、「義経」の静御前は全然駄目だ。声が低いのが特に問題であるかもしれない。上戸彩にしておけばよかったのかもしれないのに。静御前が少しばかり野性的であってもよいではないか。