タイガー&ドラゴン

TBS系ドラマ「タイガー&ドラゴン」。宮藤官九郎脚本。長瀬智也主演。第十一話「子は鎹」=最終回。
山崎虎児(長瀬智也)の孤独な状況は悲しかった。皆が山崎を出迎えようともしなかったのは彼への愛が強過ぎるからだったのだ。師の林屋亭どん兵衛西田敏行)が山崎から遠ざかろうとしたのは、山崎にとって真に居心地のよい場所は新宿流星会の組長(笑福亭鶴瓶)と銀次郎(塚本高史)父子の許であるのかもしれないと勘違いしたからだった。山崎自身の幸福のために遠慮したのだ。しかるに逆に組長や銀次郎が山崎を突き放したのは、山崎の行き先は林屋亭どん兵衛一家の他にはないことを知っていたからだ。こうした様々な行き違いが積み重なって、山崎の孤独な状況が出来した。
林屋亭どん兵衛が林屋亭どん兵衛(七代目)を実子の竜二に襲名させた上で自らは山崎に代わり林屋亭小虎の二代目を襲名したところに師の本心がよく表れているが、似た話としては、おでん屋台の半蔵(半海一晃)がおでん屋台を辞めていた件があった。初代(のち三代目!)の林屋亭小虎=山崎が刑務所に入ってしまって半蔵の屋台にも来なくなったのを機に、半蔵は屋台を廃業してしまったと云う。半蔵がどれだけ初代小虎=山崎に愛着を抱いていたかを物語る。似た心境を多分、蕎麦店主人の辰夫(尾美としのり)や喫茶店『よしこ』ママ(松本じゅん)等も共有していたに相違ない。
そうした中、山崎への思い入れの希薄であるはずのチビT(桐谷健太)一人だけが山崎を出迎えに刑務所に行き、行き場のない山崎を貧しいアパートの自室に迎え入れたのが面白かった。山崎への思い入れの最も希薄なチビTでさえ山崎をこれだけ愛していたのか。今宵の第十一話=最終回は実のところ全十二話中で最も面白くなかったのではないかと思うが、それでも主人公の孤独と愛を徹底的に描いた点には見応えがあったとも思う。