義経

NHK大河ドラマ義経」。滝沢秀明主演。第三十二話。
屋島合戦。「扇の的」に「継信最期」。平家物語の名場面が二つもあったのに感動の一つも起きなかったのが吾ながら不思議だ。今年の大河ドラマ義経」に対して先週までは概ね好意的に見続けてきたのに、今宵はどうしても温かく見る気になれない。何故こんなにも冷めて見てしまったのか?と考えるに、やはり「タッキー&翼」の無理矢理な登場で馬鹿馬鹿しくなったという面がある。滝沢秀明=タッキーが源九郎義経役に相応しいのと同じ程度に今井翼那須与一役に相応しければ文句はないが、生憎そうは思えない。そうであれば彼が起用された理由は彼が「タッキー&翼」の一員であること以外には見当たらない。だから気に入らない。源氏軍に対して「扇の的」を差し出して挑発することを発想したのが二位尼平時子准后(松坂慶子)であるという設定は面白かったし、またその意図が既に闘志を喪失したかに見える従一位内大臣平宗盛鶴見辰吾)を奮起させることにあったという描写は面白かったが、結果、平家物語の描く「扇の的」の場の和やかな娯楽性は損なわれた。また那須与一の見事な武芸に対して源平両軍ともに拍手喝采を浴びせる和やかさがあってこそ、浮かれて舞う平家の老兵をも射殺してしまう義経の冷酷非情の恐ろしさがますます際立つわけだが、もとより今作は義経をそのような人物としては描いていない。そこが物足りない。