女王の教室

日本テレビ土曜ドラマ女王の教室」。遊川和彦脚本。木内健人演出。制作協力は日活撮影所。天海祐希主演。第八話。
逆転劇の完結。不屈の神田和美志田未来)を主導者とし真鍋由介(松川尚瑠輝)・新藤ひかる(福田麻由子)・馬場久子(永井杏)や改心した佐藤恵里花(梶原ひかり)を中心に形成された反乱分子に対し、悪魔のような教室の女王、阿久津真矢(天海祐希)は、教室一番の優等生、西川浩一(酒井翔太郎)をはじめとする私立中学受験組をけしかけ、闘争状態を創造した。闘争状態は激化し、西川に対する由介の暴力沙汰により頂点に達した。もちろん全ては真矢の計算通りだったろう。暴力沙汰を問題にした近藤校長(泉谷しげる)と上野教頭(半海一晃)に対する弁明として真矢は問題児を他所に転校させる考えであることを表明。この宣告は西川をも含め教室内の皆に甚大の衝撃を与えた。真矢に対し教室の皆が友であるべきであると主張した和美の意見に新藤・馬場・恵里花以下の反乱分子ばかりか西川までも賛同し、二番目の優等生、刈谷孝子(佐々木ひかり)も賛同。これを機に一気に教室は一つになった。反乱分子以外の者たちを私立中学受験組として一つにまとめ上げておいたことで、教室が一つにまとまり易くなっていた見事な構造が見えてこよう。全知全能の真矢が実に巧妙に仕組んだ逆転劇だったのだ。見落とせないのは今回の騒動において実力行使を宣言したのは新藤であって和美ではなかったことだ。新藤が反逆者だった。和美はむしろ違う意見を持っていた。頂点に達した教室内の闘争状態を和美が終結させ得たのは自然の成り行きだったと云える。
何事にも洞察力の鋭い阿久津真矢は、「改革」を声高に叫んでいる権力者とは実際には「改革」以外の狙いがあるのを巧妙に隠しているに過ぎないことをも、冷ややかに見ているのではないだろうか。なにしろ改革者であるかのように自らを喧伝しておいて、何一つ真剣には考えようともしない民衆の注意を巧みに一つの方向に引き付けた上で、真の意味では何一つ改革しないまま何時の間にか全く別の方向へ国家を改造しつつある独裁者をさりげなく批判していた(「徹底的に戦うぞ!とか、必ず勝利するぞ!とか叫んでそれで終わり。頭を使って、本当に必要なことを考えようなんて気は一切ないの。今は日本中。改革だの何だの大見得を切って何もしない政治家然り」)。今宵一番の隠れた見所だったと云えるかもしれない。