女系家族最終回

夜十時からのTBS系ドラマ「女系家族」。山崎豊子原作。清水曙美脚本。酒井聖博演出。米倉涼子高島礼子主演。制作協力FINEエンターテインメント。制作ドリマックス・テレビジョン&TBS。第十一話=最終回。
死者による生者たちへの厳粛な処罰。亡き矢島嘉蔵(森本レオ)が生前に胎児認知を済ませていたことにより、浜田文乃(米倉涼子)の子は矢島家の正式な非嫡出子として公認され、遺産相続の権利を獲得した。しかも文乃が逝去直前の嘉蔵から預かっていた最終版の遺書が提出されたことにより、大野宇市(橋爪功)の不正が暴かれ、また三女の矢島雛子(香椎由宇)を養子に迎えることで遺産相続に参与しようと企んでいた叔母の矢島芳子(浅田美代子)の野心も阻まれた。そればかりではない。立場をなくして怒り狂った宇市は、総領娘の矢島藤代(高島礼子)を食い物にしようとした梅村芳三郎(高橋克典)の悪行三昧と両名共謀の策略を暴露し、また次女の矢島千寿(瀬戸朝香)と矢島良吉(沢村一樹)夫妻の不正を追求し、良吉と矢島商事経理部の木村かおり(田丸麻紀)との浮気をも明かした。だが、浮気の果てに無残に捨てられた木村かおりの矢島良吉に対する裏切りの根底には、「女系家族」支配による公私混同の企業経営の中で従業員が使用人同然に扱われ虐げられてきたことの悲しみ、憎しみがあったことを、文乃は強調した。実のところ宇市もまた永年にわたる奉公の中で同じ悲しみ、憎しみを共有していたのであって、遺言執行人としての任務における彼の大胆不敵な不正もまたそうした「女系」支配への復讐でもあったのだろう。
気になるのは全てが終わったあとの文乃のあの恐ろしげな笑顔と、遺影の嘉蔵の笑い声の意味が何であるか?という問題だ。矢島家の人々は「女系家族」体制の崩壊によって解放され、今となっては嘉蔵・文乃による反逆に却って感謝してさえもいるようだが、実のところ嘉蔵・文乃の真の狙いは矢島家の三人姉妹を解放することにはなかったのではないか。むしろあくまでも傲慢な「女系」支配族を転落させることにこそあったのではないだろうか。