日曜劇場いま会い最終回

TBS日曜劇場「いま、会いにゆきます」。市川拓司原作。飯野陽子・篠崎絵里子脚本。平野俊一演出。ミムラ主演。第十話=最終回。十五分延長。
冒頭のあの回想。夏の広々とした向日葵畑、炎天下に秋穂巧(成宮寛貴)が居眠りして、子どもたちに悪戯されていた場面。最終回を飾るには実に相応しい美しい映像だった。そして成宮寛貴の美しさを再認識できた。
巧を訪ねた榎田涼子(三田佳子)は、生前の榎田澪=秋穂澪(ミムラ)が少女時代から書き続けていた日記を彼に贈った。彼はそれを読んで彼に対する澪の永年の真実の想いを知った。実にこの部分こそが物語の本質に他ならない。中学生時代の出会いと幾つかの接点と卒業に伴う別れと、高校生時代の再会と訣別、そして高校卒業後の再びの別れの物語は前回までの九話にわたり断片的な短い回想の小出しの積み重ねによって朦朧と描かれてきたが、全ては巧の知る限りの、巧の視点からの語りでしかなかった。だが、今ここに澪の視点から全ては語り直された。同じ人々による同じ場面の同じ映像は語り手の変化によってその意味を一気に鮮やかに変化させたのだ。これこそが物語の面白さであると云える。榎田澪(黒川智花)に心惹かれながらも工藤明宏(三浦春馬)という強力な恋敵を前にして弱気になって落ち込んでいた寂しい秋穂巧(福本有希)の物語は、底抜けに大人しくて真面目で不器用な秋穂巧という一人の少年を熱心に見詰め続け、真に理解し、忍耐強く待ち続けた榎田澪の静かな、しかも情熱的な愛の物語へと変換された。それは感動的な変容だった。八月二十八日放送の第八話における一つの謎が解かれたのも面白かった。陸上大会の表彰式のときのあの照明の事故は、巧に対する工藤の不正が見逃されたことへの澪の抗議だったのだ。