仮面ライダーカブト

テレビ朝日系“スーパーヒーロータイム”ドラマ「仮面ライダーカブト」。水嶋ヒロ佐藤祐基主演。第十七話。
出世のためには手段を選ばない影山瞬内山眞人)の陰謀に利用されたことで自信を喪失していた加賀美新佐藤祐基)は、少しは自信を取り戻させてやりたいと意図した天道総司水嶋ヒロ)の密かな助力によって自信を取り戻したが、それどころかどうやら効き目が大き過ぎたのか、今まで抱いたこともなかったかもしれない程の絶大な自信を得てしまった。己のワーム退治の快挙が実は天道の仕業であるとも知らないで、開店前の「Bistro la Salle」で喫茶中の岬祐月(永田杏奈)や天道自身にまで武勇伝を語り聞かせること八回にも及んだ加賀美。イイカゲン聞き飽きた岬がそれを止めようとして彼の目の前に指を突き立てれば、指を指されている間のみ話を中断するものの、離れるや中断した箇所から再開する正確な機械のような加賀美。ZECT田所軍団の基地に出勤したあとも彼の自慢話は執拗に繰り返され、田所修一(山口祥行)も既に四回、岬に至っては十二回も同じ話を聞かされていた。だが、ここで注意しなければならないのは武勇伝を語ることに酔い痴れる加賀美の妄想の中で彼自身の容姿がどんどんカッコよく美化されていったところ。彼の思い描く中では、あたかも四月十六日放送の第十二話での、風間大介加藤和樹)の化粧術「アルティメット・メイクアップ」によって宝塚歌劇団の男役みたいな化粧と髪型に変身させられ、鏡に映る自らの美に見入っていたときのような、そんな艶姿の加賀美が獰猛なワームを相手に凛々しく勇敢に戦闘していたのだ。
今朝の第十七話の主題は、影山の卑劣な行動によって大きく調子を狂わされた少女ゴン(神崎愛瑠)と、ゴンと喧嘩別れしたことで己を見失った風間大介との関係にあり、そしてそこに、失われた記憶を取り戻すため小旅行に出たゴンと、それに同行することで自身の過去についても考えていた日下部ひより里中唯)の話や、全てを見守り皆を守ろうとする天道と、いよいよ天道を倒さざるを得なくなった風間の話が結び付いたわけだが、それら悲劇的とも云える本題には殆ど関係していない(故に本当はどうでもよいはずの)加賀美の、自慢話を執拗に繰り返してゆく中で次第に膨張してゆく妄想の話の方が余りにも強烈ではあった。天道が真剣にならざるを得ないときには加賀美で笑いを取り、逆に加賀美が真剣にならざるを得ないときには天道で笑い所を作ることができるのがこの番組の強みであるのかもしれない。