大河ドラマ風林火山第三十二話

NHK大河ドラマ風林火山」。原作:井上靖。脚本:大森寿美男。音楽:千住明。主演:内野聖陽。演出:東山充裕。第三十二回「越後潜入」。
根来寺の僧に扮し、鉄砲「種子島」を携え、武器商人として越後に潜入し得た山本勘助内野聖陽)が長尾景虎(ガクトGackt)に囚われていた間、砥石城では武田晴信市川亀治郎)の軍勢が再び大敗。そうなりかねないことを予測し得たからこそ決して急いではならないとの意見を甲斐において主君=晴信に対し強調していた山本勘助内野聖陽)は、今、越後において、己の意見に反して急いだばかりに無惨な敗北を喫した甲斐武田家に対し、怒りと心配の混じった複雑な思いを抱かざるを得なかったろう。しかるにそんな勘助の内面を見抜いていたかのように、勘助の前で晴信の強欲について悪口を云い、彼の敗北を「天罰」と評して嘲った長尾景虎。それを聴かされて勘助も流石に一瞬は表情に悔しさを浮かべないわけにはゆかなかったようだが、長尾景虎宇佐美定満緒形拳)も一瞬のその変化を見逃しはしなかったようだ。他方、仏教者に成り済ましながらも仏教者には全然なり切れていない勘助とは異なり、長尾景虎と宇佐美は両名ともに仏教者であろうとしているが、老練の宇佐美は、長尾景虎の潔癖な完璧主義が仏教者としては未熟であることを柔らかく指摘した。欲を捨て去ることを徹底すべく必死になることもまた欲に囚われていることでしかないと。景虎の負けだ。