仮面ライダー電王第四十話

テレビ朝日系「仮面ライダー電王」。田村直己演出。第四十回「チェンジ・イマジン・ワールド」。
桜井侑斗(中村優一)復活。消滅は一時的なものだった。ゼロノスには己等を回復する能力があるが、それには時間を要すると云うのだ。なるほど。しかし意味を解せない。気になるのは、一時的にせよ出来した桜井侑斗の存在しない世界において、既に結婚して子育てに励んでいたと見受けられた三浦イッセー(上野亮)はその後どうなったのか?無論それは一時的な存在であり、直ぐ元に戻って再び喫茶店「ミルクディッパー」において野上愛理(松本若菜)の愛を勝ち取るべく尾崎正義(永田彬[RUN&GUN])と競い合う生活に帰ったわけだが、それでは彼のあの子どもは一体どうなったのか?無論もともと存在しなかったことになるのだ。それもまた怖い話ではある。
ともあれ復活した桜井侑斗は、再び変身を始めた。「未来の俺」(=所謂「桜井さん」)の生まれてから失踪するまでの約三十年間をめぐる人々の記憶を全て消費した彼は、今度は二〇〇七年に出現した彼自身をめぐる人々の記憶をも消費し始めたのだ。愛理の前に「良太郎の友達」の、「キレイな名前」の、珈琲の苦手な甘党の、不思議な年下の少年として現れて、愛理を魅了し、楽しく過ごしてきた美しい思い出の全てが早くも消費されてしまった。彼の物語は余りにも悲しく、文字通り悲劇的で、ゆえに英雄的だ。見ていて辛くなる程に英雄的だが、機械仕掛けの神(deus ex machina)の登場に頼ることなしに救済され得るのだろうか。
戦い済んでモモタロス(声:関俊彦)はデンライナーに戻り、満足の表情で「やはり主役は俺だ」と喜んでいたが、このヒーロードラマにおける真のヒーローは、彼の自負に反して残念ながら現時点においてはどう見ても、モモタロスでもなければ野上良太郎佐藤健)でさえなく、桜井侑斗であるほかない。そして良太郎は、そのヒーローの悲劇の一部始終を目の当たりにしなければならないのだ。それもまた悲劇に他ならない。