月九ガリレオ第五話

フジテレビ系。月九ドラマ「ガリレオ」。
原作:東野圭吾探偵ガリレオ」et「予知夢」。脚本:古家和尚。音楽:福山雅治菅野祐悟。主題歌:KOH+「KISSして」。演出:成田岳。第五章。
物理学者=湯川学(福山雅治)は、密室殺人と推測されていた事件の真相を保険金目当ての自殺として論証したあと、その事件としての処理については刑事の内海薫(柴咲コウ)をはじめとする警察当局に一任することを述べた。当然だ。彼は警察でもなければ検察でも弁護士でもなく裁判官でもない。自然科学者、物理学者に過ぎないのだから、できることは謎の解明のみ。事件としての処理については責任も権限もない。かのシャーロック・ホームズであれば、紳士階級としての特権的な責任感において、全ての謎を盟友ワトスン博士と己との二人だけの胸の内に秘め、関係者の無罪放免を決断したに相違ないが、日本の現代の湯川学にはそのような精神はあり得ないし、もちろん内海薫に限らず警察という官吏は超法規的措置を決断できない。被害者の矢島(岡本光太郎)は密室で何者かに殺害されたのではなく、他殺に見せかけることで、遺族となる妻の貴子(水野美紀)と娘の秋穗(大後寿々花)のため、そして家族の夢をかけた家を守るため、保険金を遺したかったわけだが、湯川学の推理と実験によって矢島の死因が他殺ではなく自殺であると証明されたことで、矢島の己の生命をかけた願望は果たされ得なかった。この事件では加害者も被害者も(事件現場となったホテルの経営者と従業員と他の宿泊客における被害を別にすれば)あくまでも矢島家の人々だけだが、それでもなお、矢島の遺志を守ること、実行することは警察等にはできない。警察等にできることは、矢島の遺書に従って証拠を隠滅して自殺を他殺に見せかけようとした貴子を起訴しないということだけなのだ。とはいえ矢島秋穗の様子が明るくなったのは、全ての真相が明らかにされ、疑惑が晴れ、家族の愛が再確認され得たからこそだったのが明白だ。事件のあとの、湯川学と矢島秋穗との間の「捻くれた」者同士の互いを認め合う会話が実によかった。