ドリームアゲイン第六話

日本テレビ系。土曜ドラマドリーム☆アゲイン」。
脚本:渡邉睦月。主題歌:コブクロ「蒼く優しく」。協力:読売巨人軍。制作協力:アベクカンパニー。演出:中島悟。第六話。
野球選手=小木駿介(反町隆史)の生まれ変わりとしての朝日奈孝也をめぐる鮮やかに激しい逆転劇は、実に明確な表現によって着実に予告されていた。朝日奈家の家政婦=中田加代(瀬川瑛子)は、予てより「旦那様」朝日奈孝也の日記を(家政婦の特権として)盗み見るのを楽しみにしていたらしく、その内容が旦那様の無実を証明するに違いないと確信していて、それを朝日奈の娘の藤本雛(志田未来)に託した。雛は小木駿介の恋人だった弁護士の二ノ宮颯乙(加藤あい)にそれを手渡し、こうして雛も颯乙も、朝日奈=小木駿介も、「朝日奈孝也」を信頼することができた。見落とせないのは、中田加代が、日記を雛に見せる際、「最近は日記を書いてくれていない」と語ったこと。この時点で視聴者は、当の日記が小木駿介の生まれ変わりとしての朝日奈孝也の書いたものではなく、生前の朝日奈孝也の書いたものであることを知り得たのだ。その衝撃は、映像表現によってさらに強調された。日記の言が朝日奈=小木駿介の声によって再現される間の映像が、小木駿介(=反町隆史)の容姿ではなく、本来の朝日奈孝也の姿で造られていたのだからだ。ここにおいて衝撃を生み出しているものとは、生前の朝日奈孝也の精神が実は生前の小木駿介の精神と思いのほか似ていたのかもしれないという予想外の真実の顕現に他ならない。
こうして二段階にわたって意外の真理が鮮やかにも着実に表現されたのちは速やかに、この真理に相応しい結末が描かれなければならない。しかるにさらに面白かったのは、不正な手段によって朝日奈孝也を失脚させようとした熊田恒人(三宅弘城)にも、生前の朝日奈孝也と同じく熱く真直ぐな正義感のあることを今の朝日奈=小木駿介が見出したことだ。たとえ手段が不正であろうとも、その目的は正義にあったのだ。正のために不正を選んだのは、少なくとも熊田の場合には(そしてもちろん生前の朝日奈の場合にも)悪人だからではなく、単に「不器用」な生だからに違いないと小木駿介=朝日奈は見たのだ。ここで視聴者は物語を遡り、似たような人間がもう一人いたことを想起するだろう。菱沼司(須賀貴匡)。正義のために不正をも働く「人権派弁護士」の彼の仕方に、部下の颯乙は失望していたが、朝日奈=小木駿介が裏切り者の熊田を許したばかりか逆に謝罪までして和解したのを見た今、颯乙もまた、菱沼を許せるようになるのかもしれない。
今宵このドラマでは実に、あらゆる登場人物の真の魅力を存分に描いた。生前の朝日奈孝也の真実の姿が描かれたのは最も衝撃的だったが、朝日奈の真実を天国庁の田中(児玉清)は知り尽くした上で敢えて小木駿介に引き合わせたのかと思うと、これまた味わい深い。クーデターに失敗して生きる気力をも失いかけていた熊田を、牛山百子(青田典子)が平手打ちにして「確りしなさい!」と叱ったところも見応えがあった。前田健造(渡辺哲)と中田加代との間の恋の予感も面白かった。