仮面ライダー電王第四十二話

テレビ朝日系「仮面ライダー電王」。石田秀範演出。第四十二回「想い出アップデート」。
野上愛理(松本若菜)の強さには感動せざるを得ない。桜井侑斗(中村優一)は仮面ライダーゼロノスに変身して戦うために己に関する人々の記憶を消費しなければならないから、デネブ(声:大塚芳忠)の憑依した侑斗に熱烈に恋をしていた病身の少女=翔子(松本夏空)も、侑斗=ゼロノスに救われたあとには侑斗のことを忘れてしまった。もちろん愛理も、かつて婚約していた青年=桜井侑斗(所謂「桜井さん」)のことをもはや憶えていないばかりか、最近になって弟=良太郎(佐藤健)の友人(「良ちゃんのお友達」)として現れた少年=侑斗(所謂「侑斗」或いは「桜井くん」)のことも忘れてしまった。しかし記憶を失ってもなお、誰のことかも判らない甘党の「桜井くん」のため、苦くなくて飲み易い美味の珈琲を開発しておいて、何時か飲みに来てくれるときのために準備しておかなければならないとも決意していた。彼についての記憶をどんなに消されてもなお、彼がとても大切な人であるという思いだけは決して失ってはいなかったのだ。何と強い人なのだろうか。
侑斗に対する翔子の恋について、この恋の対象が侑斗の外見に対するものであるのか内面に対するものであるのかをモモタロス(声:関俊彦)やウラタロス(声:遊佐浩二)が問い、キンタロス(声:てらそままさき)が「男は中身」に決まっている!と応じ、コハナ(松元環季)やナオミ(秋山莉奈)が「そうとは限らない」と反応したのは意外に興味深い問題だ。翔子が侑斗に恋をしたのは一つには侑斗がとても優しかったからで、しかるに侑斗が示した母親のような優しさは実は侑斗のではなく、侑斗に憑依していたデネブに属するが、その優しさが翔子を魅了したのはその優しさを示したのが侑斗だったからに他ならない。ゆえに結論として、外見から切り離された内面なんてあり得ないのであると云わなければならない。