月九ガリレオ第七話

フジテレビ系。月九ドラマ「ガリレオ」。
原作:東野圭吾探偵ガリレオ」et「予知夢」。脚本:古家和尚。音楽:福山雅治菅野祐悟。主題歌:KOH+「KISSして」。演出:西阪瑞城。第七章。
帝都大理工学部物理学科の研究室で永年にわたり助手として勤務し続けている栗林宏美(渡辺いっけい)四十五歳の悲哀が味わい深く描かれた。助手としての激務を地道にこなしつつ研究をも続けて恐らくは二十年を経ているだろうが、助教授や准教授どころか講師にさえ昇進できていない。この調子では教授になんか到底なれそうもない。九歳下の若き准教授、湯川学(福山雅治)の指導下、部下として雑用に追われる毎日。
研究者としての挫折感に耐えながらもなお彼は研究者として生きてゆきたくて必死にもがき続けているわけだが、しかもなお、彼は一社会人としても敗北感を抱くのを禁じ得ない状況にあった。友人の菅原満(塚地武雅)が食品加工会社を経営して富裕の生活を享受しているばかりか、昔モテナイ者同士で意気投合できていたはずのこの友が静子(深田恭子)という美しい夫人にまで恵まれるに至ったのを見せ付けられては、己が今なお何一つ獲得できないでいるのを痛感させられ、惨めな気分になっていたのだ。
友人のこの幸福を羨んでは「早く離婚してしまえ!」と祈ってしまう程に卑屈になっていたのを半ば泣きながら悔んでいた栗林助手の姿が、憐みを誘わないではいなかった。そんな彼に、上司の湯川准教授が珈琲を差し出したのは静かによい場面だった。
そして栗林助手の友の菅原が、静子の彼への好意がもともと財産目当ての恐るべき陰謀の一部でしかなかったことを知り、またその陰謀の過程で二名の男女を殺害した罪で静子が逮捕されようとしているのを目の当たりにして、真に深く落ち込んだとき、湯川准教授が菅原と栗林助手とともに男三人で酒でも飲みにゆこうと誘った場面も、やはり静かによい場面だった。栗林助手の人物像が何時になく詳細に、魅力的に表現されたのに伴うかのように、湯川准教授もまた奥行ある魅力を発揮し得た感がある。実によかった。