旅行記三

昼の少し前にホテルを退出した。長崎の美術館と博物館で購入した展覧会図録数冊については、宅配便での発送を出発前にホテルのフロントで依頼しておいた。これから直ぐ福岡空港へ向かうのがよいか、それとも少し博多で過ごすのがよいか。その時点で、松山行き飛行機には昼の便と夕方の便が残されていたが、昼の便だと機体が小さいので揺れが非道い。というわけで夕方の便を予約して購入して、時間の余裕ができたので、荷物を博多駅のコインロッカーに預け、地下鉄で大濠公園へ。福岡市美術館へ行った。
福岡市美術館では常設展示のみを見た。ラファエル・コランの大作「海辺にて」の美しさ、上手さに改めて感心した。脇にある黒田清輝等の作品と比較すれば技巧の程には歴然の差があると判る。青木繁の「秋声」は上手い。彼は黒田の弟子だが、その前には小山正太郎画塾不同舎の門人でもあった。小山正太郎にしか学んでいない坂本繁二郎の「大島の一部」も重厚だし、吉田博の渓流図も上手い。これを見ると、やはり日本の美術を駄目にしたのは東京美術学校以降の歴史であると思われてくる。ダリの「ポルト・リガトの聖母」には見る者を圧倒する大きさがあるが、私見では、長崎県美術館蔵のダリのヘラクレスウェヌスとクピドを描いた小品の方に見応えがある。福岡のダリの作品については大人向けの解説は盛り上がりそうだが、子ども向けには解説のしようがないだろうとも思われる。事実上「18禁」の美術だ。二階の近現代美術展、版画展、彫刻展を見たあと、玄関脇の図録販売所で雪舟展等の図録五冊を購入したところオマケとして光琳の絵葉書一枚を頂戴した。一階の古美術展示室を見てから館を出て、大濠公園から再び地下鉄で博多駅へ。コインロッカーの荷物を取って再び地下鉄で空港へ。松山空港へ着いたのは夕方六時を過ぎた頃。帰宅後に外出し串揚げ店で夕食。