仮面ライダー電王

テレビ朝日系「仮面ライダー電王」。長石多可男演出。第四十七回「俺の最期にお前が泣いた」。
キンタロス(声:てらそままさき)と野上良太郎佐藤健)等との別れ。自然に消滅することよりも、果敢に戦って最後に花を咲かせて潔く散ること(「花は桜、人は武士」)を望んでのことであるあたりが、実にキンタロスらしいと云わざるを得ない。そのことのために彼は、デンライナー内での和やかな書初めのとき良太郎を油断させて、契約を完了させた。あの書初めの直前のキンタロスの言葉遣いが急に標準語と化していたのは、大きな決意を胸中に秘めた彼の、極度の緊張感の程を示していよう。
良太郎と桜井侑斗(中村優一)の、初詣のときの会話。両名とも、充分には事情を知らされないまま理不尽な戦いを強いられていることについて、戦い済んだ暁には青年=桜井侑斗(所謂「桜井さん」)と野上愛理(松本若菜)の両名に対して文句を云おう!と語り合っていた。実のところ少年=侑斗が青年=桜井をどう思っているかというのは興味深く難しい問題ではある。少年は大人に対して反発するものだが、その大人が将来の自分自身であるとなると反発しようがない面もあるだろうか。もちろん反発できなくとも納得もできてはいないという状況は当然あり得るわけで、彼が常々義務を守り責任を果たしながらも苛立ちを隠せないでいたのは、義務を課しているのが「己の同一人物でありながら己と決して同一ではない人物」だったからに他ならない。この任務の真の目的が何であるのかを彼は知らされてはいないかもしれないが、それでもなお彼は、将来の己自身から課せられている任務の必要性と、それを遂行するのが己である必然性を、どうしても疑えないでいることだろう。