1ポンドの福音第八話

日本テレビ系。土曜ドラマ1ポンドの福音」。
原作:高橋留美子。脚本:福田雄一。主題歌:KAT-TUN「LIPS」。第八話。演出:狩山俊輔。
誰のために戦っているのか?畑中耕作(亀梨和也)は、ボクシングのリング上、日本チャンピオン紅流星(桐谷健太)相手に戦いながらその自問自答を続けていた。この問いは多分、シスターアンジェラ(黒木メイサ)を救うため紅流星のホストクラブに乗り込んだ際、当のシスター自身から「畑中さんは畑中さん自身のために戦ってください」と叫ばれて以来、彼の胸中を支配し続けてきた。そのことが余りにも気になる余り、試合の前日、下見に行った会場のリング上での上田正志(岡田義徳)や石坂(高橋一生)や児島(波岡一喜)や堀口(石黒英雄)等の激励にも、陽気に応じることができない程だった。
実際、自分自身のために戦うというのは意外に難しいことだ。職業ということを例に考えてみるがよい。自身の幸福のために働いているつもりが、気付けば何時しか心身を磨耗させるのみの日常で何時も疲れ果てていて、一体何のための仕事なのか?解らなくなってしまう。金のためとか名誉のためとか言い換えたところで同じことだ。何のための金か?何のための名誉か?同じく解らなくなってしまうだろうからだ。そうなると結局、たとえ愛が脆いものだとしても、やはり愛する家族のために戦う!という決意が、最も強いのではないだろうか。畑中耕作の場合それは、将来の妻となる予定の(正確には、将来の妻であって欲しい)シスターアンジェラのために戦うということだ。試合の前に行われた記者会見の席上、「結婚する予定のシスターアンジェラのために戦う」と宣言した彼は、試合の中、実際に戦いながら、何のため、誰のために戦うのかを自問自答する中で改めてそのことを、今度は本気で決意することができたのだ。勝利の瞬間がそこに来た。