新番組=おせん第一話

今宵からの新番組。
日本テレビ系。ドラマ「おせん」。
原作:きくち正太講談社「モーニング」「イブニング」)。脚本:大石静。音楽:菅野祐悟。主題歌:(序曲)Micro「踊れ」/(終曲)タッキー&翼恋詩-コイウタ-」。協力プロデューサー:山口雅俊(ヒント)。プロデューサー:櫨山裕子三上絵里子/内山雅博(オフィスクレッシェンド)。制作協力:オフィスクレッシェンド。演出:南雲聖一。第一話。
特に期待することもなく見たが、実に面白かった。話も面白かったが、それ以上に雰囲気や画に魅力があった。
特に、江崎ヨシ夫(内博貴)が老舗の料亭「一升庵」の板場で「本物」の料理を志して修業を始めたものの、そこでの方針、精神を解し得なくて直ぐ嫌になり、わずか数日後の朝早く、若い女将の「おせん」こと半田仙(蒼井優)に別れを告げて去ったあと、彼への最後の命令としてビールを持ってきてもらって一人で飲んでいた仙の様子が実によかった。
仙の居室の床の間は、幾つもの艶やかな扇で飾られていて、そこに朝陽が優しく差し込んで、柔らかく照らされていたが、その室内で起床したばかりの仙が、前夜の盛装の、鮮やかに赤い和服を着たまま寝ていたため既に着崩れていて、でもそれを整えるでもなく、そのまま寛いだ姿勢で、江戸切子の紺色のグラスでビールを飲みながら物思いに耽っていた。その趣はジャポニスムのフランス絵画に登場する「異国風」(浮世絵風)の美人のようでもあり、なかなか絵になっていたと思う。こういう微妙な「江戸情緒」が面白い。
半田仙と料理対決をした料理研究家、桜井三千子(片桐はいり)の派手な胡散臭さも面白かった。こういう役をやらせると片桐はいりは最高に上手い。極めてインチキ臭く嫌味な感じを強烈に発散しつつ、どこか憎めない。
江崎ヨシ夫は軽薄で調子者の若者だが、頭は決して悪くない。他人の言の受け売りで偉そうに語るところは軽薄そのものだが、反面、人の言に己の思いを深く重ね合わせ得るだけの知性と情、優しさを備えてもいるのだ。そんな江崎ヨシ夫の軽さに一々腹を立てる竹田留吉(向井理)と、彼等の間で自分なりのリズムを守る長谷川健太(奥村知史)との若手同士の関係も楽しくなりそうで、今後の楽しみの一であり得る。内博貴は洋服よりも和服が似合うとも思う。
驚かされたのは、杉本哲太の演じる「一升庵」板長の名が「藤城清二」であること。影絵作家の藤城清治みたいだ。ちなみに四国の伊予国松山城下の堀之内公園にある県美術館では現在「藤城清治 光と影の世界展」を開催中。かなり見応えのある展覧会なので推奨したいが、同時に、五月下旬までの間は同館二階に立ち寄るべからずと助言しておきたい。