絶対彼氏第六話

フジテレビ系。ドラマ「絶対彼氏-完全無欠の恋人ロボット」。
原作:渡瀬悠宇絶対彼氏。フィギュアなDARLING」。脚本:根津理香。主題歌:絢香「おかえり」。音楽:福島祐子&audio highs。制作:フジテレビ&共同テレビ。演出:北川学。第六話。
恋人ロボット「理想の彼氏」天城ナイト(速水もこみち)は、それを開発した並切岳(佐々木蔵之介)や上司の白鷺優貴(篠井英介)に云わせれば、「自我を持ち始め」、人間に近付いているが、それでもなお、今後の展開を通してもロボットから人間へ化すわけではなかろうと仮定してよいだろう。
そうであれば、物語の行方は、(一)二重の悲劇性を孕んだ喜劇として終わるか、さもなくば(二)悪い冗談としか思えない喜劇性を装った悲劇(或いはむしろ殆ど怪談)として終わるか、何れかである可能性が高い。
何れにせよ、現時点において確認されるべきは(一)浅元創志(水嶋ヒロ)と井沢梨衣子(相武紗季)とは相思相愛であり、似合いの二人であるだけではなく、特に浅元創志にとっては井沢梨衣子は不可欠の人であること、しかるに(二)天城ナイトは、ロボットの本性によって、井沢梨衣子を愛さない者であることができないこと、他方、(三)井沢梨衣子は、人間である以上、浅元創志と一緒に幸福になることはできても、天城ナイトと一緒に幸福になることはできない可能性が高いし、また、そのことを確と理解できてもいる反面、天城ナイトを捨て去る気にもなれないでいること等だろうか。
あらゆる混乱の原因は、天城ナイトが単なる「家電製品」に過ぎないという真実を、井沢梨衣子が周囲の誰にも説明できないでいることにある。しかし問題を真に深刻化させているのは当の「家電製品」が本当のところは単なる家電製品でもないことだ。テレヴィや冷蔵庫のような単なる家電製品にも愛着を抱くことはあり得るが、天城ナイトは人間に近い姿に造られ、人間の心に近い機能をも内蔵している。その心が、たとえプログラムの範囲を超えることのない人工のものであり、本物の人間の知能を超えることのない原始的な稚拙なものであろうとも、何程か「心」のようなものである限り、単なる家電製品のようには扱い難い。それは云わば、既に犬や猫に近い存在にさえなり得ていると云えるかもしれない。実に恐ろしい発明なのだ。