炎神戦隊ゴーオンジャー第十六話

東映炎神戦隊ゴーオンジャー」。
第十六話「名誉バンカイ」。武上純希脚本。中澤祥次郎監督。
先週から今週にかけての二話にわたり物語は転換点を迎えつつあると見受ける。云うまでもなく、吾等が炎神戦隊ゴーオンジャーの体制を変更させ得る第三の勢力として、空を飛行する二体の炎神「ウイング族」が出現したからだ。彼等は今のところまだゴーオンジャーの味方ではないが、敵ではないことだけは既に判明している。蛮機族ガイアークを敵とする炎神である一点において間違いなく同志であるからだ。
他方、蛮機族ガイアークの側も一つの転換点を迎えつつある可能性はないだろうか。害地大臣ヨゴシュタイン(声:梁田清之)の忠実な配下、害地副大臣ヒラメキメデス(声:中井和哉)の参入が、これまでの「三大臣」体制に微妙な変化を与えつつあるように見受けるからだ。これまで三大臣は、仲よくケンカをしながら、所謂「勢力の均衡」を保ってきていたように思う。しかしヒラメキメデスがヘルガイユ宮殿へ入城したことは、ヨゴシュタインの立場を強くして三大臣間の権力の均衡関係を崩し、自ずから他の二大臣を苛立たせざるを得ないだろう。ここにおいて特に見落とせない点は、三大臣の一人、害水大臣ケガレシア(及川奈央)と、ヒラメキメデスとの間に確執のあることだ。ヒラメキメデスに不信感を抱いているのはケガレシアばかりではなく、害気大臣キタネイダス(声:真殿光昭)も同じだが、対するヒラメキメデスは、ケガレシアを内心では軽蔑しているのが見て取れるのだ。もっとも、三大臣中ケガレシアだけを軽く見ているのか、それともキタネイダスをも軽く見ているのか、それとも案外、ヨゴシュタインに対してさえ、本心では忠誠を尽くすつもりもないのかは定かではない。ゴーオンジャーの手強い敵であるヒラメキメデスは、実は蛮機族ガイアーク三大臣にとっても厄介な存在になる恐れがないだろうか。そうした予感を抱かせる先週と今朝の二話だったと思う。
ともあれ、ゴーオンジャー五人衆の言動は今回も楽しかった。
今回の敵は害水大臣ケガレシアの配下、蛮機獣オイルバンキで、その主な攻撃はオイルで「摩擦力ゼロ」状態を作って向かう者たち皆を滑らせることにあった。その攻撃を封じるためゴーオンレッド江角走輔(古原靖久)が発案した反撃の方法は、巨大で強力な清掃用具「ゴーオンモップ」で、オイルバンキの発したオイルを全てキレイに拭き取ることにあったのだ。走輔の発想に基づいてそれを開発したのはもちろん、ゴーオンブルー香坂連(片岡信和)。開発も何も、単なるモップにしか見えないのだが、そもそもオイルバンキの戦法が単純なので、反撃の方法も単純でよいのだ。分かり易さが心地よい。
オイルバンキは最初から「産業革命」をして出現し(所謂「最初からクライマックス」状態)、二度目の出現の際には「再び」の「産業革命」を経て「第二次産業革命」をも展開してみせた。この「第二次産業革命」を惹き起こしたのはヒラメキメデスの「ヒラメキ」によるものだったが、それを実現させる際の決め台詞は「ヒラメキメデス、これで決めです」。何だか先週のゴーオングリーン城範人(碓井将大)の「ヒラ・キメキメデス」と大差ないではないか。
蛮機獣の台詞は毎回かなり面白いが、今回のオイルバンキの台詞にも楽しいのが多かった。ゴーオンジャーをオイルでツルツル滑らせて止めを刺すときの「ドリームズカムツルー」とか、「第二次産業革命」の力で空を飛行していたところをゴーオンジャーに引き摺り下ろされたときの「ひとの足ひっぱるような真似をしちゃいかんぞ」とか、落ちたときの「翼の折れたエンジェルじゃないツル」とか、最期の瞬間の「ツルは千年て嘘ツルー!カメ」とか。