ごくせん第九話

日本テレビ系。開局55周年記念番組。土曜ドラマ「ごくせん」。
原作:森本梢子「ごくせん」。脚本:横田理恵。音楽:大島ミチル。主題歌:Aqua Timez「虹」。プロデュース:加藤正俊。制作協力:日テレアックスオン。演出:佐藤東弥。第九話。
赤銅学院3年D組生徒中の五人が悪の道に引きずり込まれそうになっていたのを、他の二十三人の仲間たちと、彼等の担任の先生「ヤンクミ」こと山口久美子(仲間由紀恵)が救出するの話。だが、その前半には、赤銅学院の校舎内に立つ創立者=赤城又八の銅像が夜な夜な動き出すらしい…という所謂「学校の怪談」をめぐる騒動があり、そこにおいて3年D組の生徒も教師も一緒になっての肝試し、否、犯人探しの話が来た。今宵の話で最も面白く楽しめたのがその部分だったのは云うまでもないが、同時に、その前半の異様な盛り上がりと楽しさこそが、後半における救出劇へ向けての物語の収束を必然化したのも明らかだ。「赤銅の怪伝説」で大いに盛り上がる風間廉(三浦春馬)以下3年D組の連中は、学校という場での日常生活を存分に楽しんでいて、その言動が、たとえ「ガキ」みたいであろうとも純粋に楽しそうであればある程に、そんな「ガキ」の世界から逸早く脱走しようとする余り、悪い連中の末端に組み込まれ、悪事に加担することを不本意にも強いられつつあった五人組の苦悩と後悔が、ますます際立ってくるからだ。
怪伝説で盛り上がる場面は楽しめた。風間廉、神谷俊輔(三浦翔平)、市村力哉(中間淳太)は「赤銅の怪伝説」の怪しげな話の数々について詳しかったのに対し、本城健吾(石黒英雄)や倉木悟(桐山照史)は何も知らなかったようで、聞いて驚いていた。夜の学校における肝試し大作戦では、食料の調達に夢中になってしまった細川丸男(まるお)の存在が、文字通り遠足のような、修学旅行のような賑やかさを一段と盛り上げてくれて実によかった。神谷俊輔は大きな十字架を手にして、胸元には魔除のニンニクを大量に下げていた。あの十字架は段ボール紙か何かを組み合わせて銀紙を貼った手作りのもののようだった。家で作ってきたのだろう。そこが面白い。
夜の学校の、半ば遠足のような騒動の末、彼等とヤンクミは窃盗犯を逮捕し、警察から表彰されてしまった。この問題児たちの集団をできれば退学にでも追い込んで一掃してしまいたい考えの猿渡五郎教頭(生瀬勝久)の、この快挙を素直に喜べない様子も楽しかったが、傑作だったのは彼等への褒美として選りにも選ってヤンクミがケーキやジュースを盛大に奢り、教室内で祝勝会を始めさせたこと。あんなことをして、猿渡教頭に見付かったら大変なことになりそうだが、3年D組の連中がジュースで乾杯をしていた表情は素直に嬉しそうだった。丁度そこへ入ってきた「遅刻組」五人に対し、風間廉や本城健吾が口々に、「おまえらも来ればよかったんだよ」「ほんとだよ、スゲー面白かったぞ」と自慢する様子も、本当に嬉しそうだった。
この明るい楽しさがあってこそ、五人の逸脱の苦しさが際立つのだ。
今回、就職活動中に味わった屈辱から道を踏み外して悪の道に引きずり込まれそうになっていたのは、吉田竜也(若葉竜也)、村山壽太(夕輝壽太)、浜口公輝(前田公輝)、大平康介(鯨井康介)、山本ユウジ(ユージ)の以上五人。先々週の第七話における学院の文化祭「赤銅祭」ではあんなにも楽しそうで愛らしかった吉田竜也が、こんなにも憎らしい不良に一変してしまうとは意外なようでもあるが、しかし思うに、悪に走るか否かの差は紙一重でしかないというのは、実のところは現実世界においても常に一般に妥当する真理ではないだろうか。
彼等五人の今回の異変の原因を作った一つの事件について証言をしたのは若槻友也(蕨野友也)。そして五人を悪の道に引き込んだのが芝山(八神蓮PureBOYS])という人物であるらしいことを突き止めたのは学級で一二を争う美少年の原明大(真山明大)と松方広(矢崎広)の二人。季節は春から夏へ移り、暑い日々の続く中、二人とも学ランを脱いで過ごしていた。原明大は白いTシャツに緑色のアフガンストールを巻いて、涼しいのか暑いのだか定かではない恰好だが、愛らしく爽やかで似合っている。松方広は白い野球ユニフォーム姿。少し髪が伸びたろうか。髪が伸びたと云えば高橋公人(戸谷公人)で、美しさが増して見えた。
さて、あの五人の異変に芝山という奴の関与のあるらしい由、原明大と松方広からの報告を受けて、当の芝山が相当ヤヴァイ奴であることを述べたのは田中麻聖(中山麻聖[元PureBOYS])だった。彼がそのような事情に通じていたのはPureBOYS「乾杯ジュテーム」関連の人脈によるものだろうか。