渡る世間は鬼ばかり第十二話

水曜日の夜には体を鍛え過ぎたのか少々筋肉痛が残っていたので今宵はスポーツクラブ行きを断念。調査協力者氏に連絡を取り、夜九時前から約二時間、二番町通にある店で夕食会。そのあと喫茶店にも寄り、一時半頃に散会。電車が走っていない時刻なので道後まで徒歩で帰宅。
ところで。
TBS系。橋田寿賀子ドラマ「橋田寿賀子ドラマ渡る世間は鬼ばかり」。
作(脚本):橋田寿賀子。音楽:羽田健太郎。ナレーション:石坂浩二。演出:清弘誠。プロデューサー:石井ふく子。第九部第十二話。
昨夜放送のこの第十二話における見所は、何と云っても高級フランス料理店における小島家ラーメン店「幸楽」店主夫妻、小島勇(角野卓造)&小島五月(泉ピン子)の、今時あり得ない類の失敗の連発だろう。新喜劇的とでも形容するほかない描写の連続だった。
ナイフとフォークを使いこなせなくて肉を飛ばしてしまったり、ナイフで食おうとして痛くて食えなかったりして、折角の料理を前にしながら殆ど手を付けることさえできないまま「食欲がない」など心にもない言い訳をしてしまう始末。指を洗うための水を飲み水と間違えて飲んでしまったのも、期待通りと云ってよい。流石にここで、この夜会の主催者である大井精機社長の大井道隆(武岡淳一)から助け舟があり、一代で会社を立ち上げた苦労人ならではの度量の大きさを見せたが、大井社長夫人の直子(夏樹陽子)は眼前のラーメン店主夫妻を怖い目で睨んでいた。この夫人、元来こんなに怖い人だったのか?何だか数週間前とは印象が違う気がする。
しかし大井直子は、数週間前には小島夫妻に対して友好的だったのがこの夜にはどういうわけか最初から敵意を示していた反面、小島夫妻の長男、小島眞(えなりかずき)に対しては、あくまでも好意的であり続けているようなのだ。というか、小島夫妻に対する敵意は小島眞への好意に基づいている。大井精機社長夫人は、自身の長男である大井輝(大川慶吾)の家庭教師としての小島眞を信頼し、自らの夫が社長秘書としての小島眞に寄せる信頼をも信頼するのみか、自らの長女であり長男の姉である大井貴子(清水由紀)と小島眞との、結婚を前提した交際にまでも大いに賛成する挙句、この結婚の上は大井家への婿養子として迎えたい考えをも有していた。だからこそ小島夫妻が小島眞を今なお「幸楽」後継者にしたいつもりではないかを警戒し、敵意を顕にせざるを得なかったのだ。まさしく「私のために争わないで」状態だが、小島眞が大井家にとってどうしてそこまで魅力的であり得て争奪戦をさえ惹起し得るのか、視聴者には全く解せない。
ともあれ、小島勇&五月夫妻の失敗の数々は、実のところ誰もが容易に予測できていたことではある。フランス料理なんか食ったこともないと自称する両名が、フランス料理を正しい作法で上手いこと優雅になんか、食えるはずがないではないか。食える法がないだろう。食えるはずであると考えてよい道理はない。そのことを最もよく解していたのは小島眞ではないのか。だから大井夫妻からフランス料理店に招かれた時点で彼自身が色々心配しておくべきだったのだ。危機管理とはそういうことだろう。しかるに小島眞にはそうした危機意識が欠如していた。そんな間抜けな、思慮の足りない人物に、社長秘書の仕事が務まる道理がない。