仮面ライダーキバ第二十八話

東映仮面ライダーキバ」。井上敏樹脚本。長石多可男演出。
第二十八話「リクエスD.C.-時を変える戦い」。
正義の味方としての名護啓介(加藤慶祐)が鮮やかに復活した。このところ変態的「おっさん」(ただし二十二歳)と化して迷走を続けてきた彼が、キャッスルドランの次狼(松田賢二)の手引きにより二十二年前に飛び、仮面ライダーイクサに変身する男、紅音也(武田航平)と出会い、さらに真夜(加賀美早紀)という風変わりな女に生まれて初めての恋心を抱いたことで、本来の、神に仕える英雄としての使命感を取り戻したのだ。この束の間の時間旅行の過程で紅音也と交流し得たことは極めて重要なことだったろう。第十七話から十八話にかけてキャッスルドランの次狼は、どういうわけか、本来の味方であるはずの仮面ライダーキバではなく敢えて仮面ライダーイクサの名護啓介を手助けしたことがあったし、第二十話でも、キャッスルドランがイクサを(工事現場のパワーショベル風の)パワードイクサ諸共に自らの背に乗せて戦わせたことがあったが、それら全ては恐らく、紅音也のと次狼との間の約束により遂行されたに相違ない。音也と名護との間は、血の繋がりこそなくとも、正義の味方としての同士愛で繋がれたのではないだろうか。
名護啓介の初恋は、彼が己の内の恋心に気付いた次の瞬間にはその女がファンガイアのクイーンであることを知らされて敢えなく永遠に破れ去った。生まれて初めて恋を知った彼は、恐らくは再び、恋をしない男として生きてゆくのではないだろうか。だが、恋を知った上で恋をしないことは恋を知らぬまま恋をしないこととは全く違う。また、この一瞬で終わった恋の証としての「初めてのボタン」が二十二年後の紅渡に伝えられていたことの衝撃は、今後の名護の精神と行動にどのように左右するのか?というのも興味深い要素だ。