旅行記三-相国寺承天閣美術館等

旅行記三。今日も朝十一時半頃にホテルから外出。梅田駅の食堂街にある鮮魚料理店で昼食。以前にも来たことがあるが、やはり美味だった。そして昼、阪急電車で京都の烏丸駅へ。そこから徒歩で炎天下を北上。京都御苑を通り抜けて相国寺へ行き、承天閣美術館で開催中の「狩野派と近世絵画展」前期展を観照。伝狩野元信筆「渡唐天神図」や狩野宗秀筆「柳図屏風」、長谷川等伯筆「竹林猿猴図屏風」(重要文化財)、狩野尚信筆「周茂叔愛蓮図」等。もちろん伊藤若冲筆「月夜芭蕉図」「葡萄小禽図」も出ていて、全体として見応えがあり、わずか二室の会場を一周するまでに約二時間半を要した程。この前期展は十一時三十日まで開催され、十二月六日以降は後期展が始まる。また見に来よう。館を出れば、外は既に夕暮れ。相国寺を出て再び京都御苑を抜けて南下し、寺町通の新古書画処へ。突然の訪問だったにもかかわらず長時間の話をさせていただき、親切にしていただいて誠に有り難く、申し訳ない程だったが、実に楽しい時間を過ごすことができた。とはいえ、新古書画店の得意先は今や日本人よりも米国人やドイツ人の方々だそうで、最近の日本人が殆ど顧みない幕末明治の書画の名品が今や凄まじい勢いで海外へ流出しつつあるという話を聞くと、流石に恐ろしくなってくる。現今、現代アート支持者たちは日本の現代アートの海外流出を止めよ!と言い張るが、率直に云って、幕末明治の書画をめぐる危機的な状況はそれどころではないと思う。日本では誰も顧みない塩川文麟や鈴木松年の作品は、国内で安価で売買されて、海外へ流れたあと、何十倍にも評価額を上げていると云うではないか。これまで国内の美術研究者の圧倒的多数は江戸時代以前の美術と戦後の現代アートばかりを礼賛し、近代美術研究者も明治後期と大正と昭和の新傾向のものばかりに目を向け、全体として、幕末明治の書画を過小評価してきたが、そうした不当な評価を是正するのはどうやらまたしても海外からの「逆輸入」という格好になりそうだ。無念な話ではないか。
阪急電車河原町駅を出発したのは夜十一時。梅田に着いたのは十一時五十分の少し前。ホテルに戻ったのは十二時。そういえば今宵は月九ドラマ「太陽と海の教室」の最終回の放送日だったわけだが、見逃しても惜しくはない。四国の自宅で録画を予約してあるので見ることはできる。