渡る世間は鬼ばかり第三十一話

TBS系。橋田寿賀子ドラマ「橋田寿賀子ドラマ渡る世間は鬼ばかり」。
作(脚本):橋田寿賀子。音楽:羽田健太郎。ナレーション:石坂浩二。演出:荒井光明。プロデューサー:石井ふく子。第九部第三十一話。
今宵はカドタクこと角野卓造のCD発売を記念するの番組。曙橋商店街に店を構える小島家ラーメン店「幸楽」店主の小島勇(角野卓造)が、娘婿の田口誠(村田雄浩)、妻の妹の夫の金田典介(佐藤B作)、街の布団店の店主の中本源太(山本コウタロー)、街の電気店の店主の川上哲也井之上隆志)とともに結成したオヤジ・バンドの演奏会が、曙橋商店街の祭において大々的に挙行されたのだ。しかも、これは事実上(ドラマ外の事情としては)カドタク率いるオヤジ・バンドCDデビューを記念するの祭典でもある。本当にCDが発売されたのだ。
もっとも気になるのは、もともとが町興しのための起爆剤となるべく結成されたバンドであり、確かにその創立メンバーこそ曙橋商店街で生まれ育った三人組だったとはいえ、現状としては余所から来た者が二人も入っているということだ。田口誠と金田典介は他所の町で生まれ育ったし、田口は現在は小島家の近くに住んでいるものの、金田に至っては今なお他所の町に住んでいるものと思しい。今宵の祭典においても「この町で生まれ育ち、この町と一緒に老いた者たちが、バンド活動を通して青春を取り戻し、この町にも一緒に青春時代へ若返ってもらうため、今ここに演奏を披露する!」という趣旨の開会宣言があったが、その割には余所者が多いと云わざるを得ない。
神林常子(京唄子)の本間長子(藤田朋子)に対する厳しさは今や熾烈を極めている。嫁の献身的な介護に感謝したかと思えば翌週には過酷に責めまくり、その態度には一貫性がなくなりつつある。しかし現実の人間とは案外そういうものなのかもしれない。他方、エリート医師から一転、無職の中年へと化した本間英作(植草克秀[少年隊])には神林清明愛川欽也)が救いの手を差し伸べようとしている。神林清明先生は常に救世主としてドラマに現れる感がある。このほか、高橋文子(中田喜子)が金田利子(山下容莉枝)との会話の中で離婚の危機の気配を示唆したことも、今宵の見所の一として記憶されてよいだろう。