ギラギラ第四話

テレビ朝日系。ドラマ「ギラギラ」。
原作:滝直毅&土田世紀。脚本:荒井修子。音楽:住友紀人。主題歌:GIRL NEXT DOOR「情熱の代償」。ホスト監修:頼朝&藤崎蓮。制作:ABC&テレビ朝日ホリプロ。演出:高橋伸之。第四話。
東京六本木のホストクラブ「Rink」のホストの新たな本部長、七瀬公平(佐々木蔵之介)を狙うべく新宿「ATLAS」会長の堂島文治(平泉成)が送り込んだ刺客は、当の堂島配下のホストの筆頭、六本木「ATLAS」代表の影士(阿部力)の文字通り体を張った阻止によって退けられ、「Rink」と公平は一応この危機を脱し得た。影士は尊敬する公平の身代わりになって刺されたものの、傷は浅く、手術は成功し、無事だった。しかし敵を物理的に抹殺してしまおうとするとは、堂島も下手なことをしたものだと評せざるを得ない。これに比するなら、一見あたかも堂島に従属するかのように振る舞っていた「銀座の将軍」、銀座のクラブと和風ホストクラブ「琥珀」経営者の葛城大成(石橋凌)はもっと陰湿に巧妙な攻撃を仕掛けてきた。その標的となったのは、影士の策略の一環として一旦は六本木「ATLAS」へ引き抜かれたものの、直ぐに捨てられ、行き場を失って仕方なく公平に申し出て再び「Rink」へ戻って来たホスト八人組の内の一人、元No.3の裕樹(崎本大海)だった。出戻り組八人と残留組との間の対立関係を利用し、煽り、激化させることで「Rink」ホスト衆の連帯を完全に破壊しようとしたのだ。
公平にとっては大切な友の一人とも思われていた葛城大成からの攻撃を、公平はオーナーの園部有希(真矢みき)とともに、あくまでも自分の流儀を通すことによって乗り越えた。その過程は、裕樹に対する公平の態度をめぐって「Rink」ホスト衆の態度が大きく変容したドラマとして要約することができるだろう。客に対する強姦の罪を着せられた疑惑の裕樹を、公平が、あくまでも仲間として信じる!と宣言することによって他のホストたち、それも弟分の翔児(三浦翔平)と秀吉(佐藤智仁)をも含めた皆の心が一旦は公平から離れてしまったが、ついに葛城大成の陰謀が暴かれて裕樹の無実が証明されたとき、翔児と秀吉は無論のこと残留組も出戻り組も皆が己等の愚かな派閥争いを反省し、公平の流儀を見直し、魅了されて、「Rink」ホスト皆で一体となるべきことを知るに至ったからだ。公平は危機を好機に変えた。
このように、所謂「夜の世界」を描いているのに青春学園ドラマのような熱気に満ちているが、実際(公平を除く)ホスト役の役者たちの殆ど全員が、つい最近まで「ごくせん」をはじめとする学園ドラマに出演していたわけなので、群衆の中で目を惹きながら全体を盛り上げる術をよく心得ている者が多いのではないかと思う。そうした意味で今宵の一番の見所と云えば、危機を乗り越えた公平を中心に「Rink」の仲間たち皆で盛大に盛り上がろうとしていた場面での、園部有希を抱き上げた翔児だろう。背後から、背中と脚に腕を回して抱き締めるようにして、全身を両腕の上に寝かせるような恰好にして抱え挙げる形。それを人は「おひめさまだっこ」と形容する。抱き上げられた有希が一瞬、驚きの声を上げ、床に下ろされたあとも、いかにも突然のことに焦って興奮したような表情をしていた様子だったのを見る限り、どうやら翔児役の三浦翔平のアドリブだったと思しい。ゆえに有希のあの驚きの声は有希の声ではなく、演じる真矢みき自身の声だったのだろう。
翔児と秀吉が、公平を通してオーナー有希の命を受けて、裕樹に強姦されたと主張する植木エミ(秋山莉奈)を尾行するところも面白かった。相手は一人なのだから別に二人組で行動させる必要はないのではないか?と考えることもできなくはないが、敢えて二人組で行動させたのは、この女の背後に闇の勢力があることを感じ取った上での冷静な判断と云うべきだろう。相手に気付かれた場合には乱闘になる恐れもあるから、確かに一人では危険だ。まるで警察のような判断だが、あのオーナーの容姿と雰囲気を想定すると違和感がない。結果として二人のコンビネイションを見せてくれて楽しめた。翔児と秀吉の捜査の結果、この女が「Rink」の新人ホストの正岡順(中村倫也)の交際相手であり、しかも順の正体が葛城大成の店「琥珀」のNo.1ホスト、青龍に他ならないことも判明した。
青龍は今回の作戦に失敗した結果、非情にも、銀座「琥珀」における現役No.1ホストだったにもかかわらず直ちに解雇された。彼の油断は、己の力量を過信する余り、非情の人である葛城大成の情のなさを過小に見積もり、己をあたかもその非情の射程の圏外にあるかのように錯覚してしまったことにある。葛城大成は、ホストの靴が磨かれていないという理由だけで即刻そのホストを解雇してしまうような恐ろしい男だ。己一人が特別であると信じてよい理由はどこにもない。有希から「あなたも葛城大成にとってはRinkを潰すための駒の一つに過ぎない!」と云われた瞬間、己も「駒の一つ」でしかない可能性を初めて気付かされたのかもしれないが、それでもなお、そんなはずはない!俺だけは特別だ!と信じようとしていたのかもしれない。このあたりの描写は意外に深い。中村倫也真矢みきの芝居が光っていたと思う。