ギラギラ第六話

テレビ朝日系。ドラマ「ギラギラ」。
原作:滝直毅&土田世紀。脚本:荒井修子。音楽:住友紀人。主題歌:GIRL NEXT DOOR「情熱の代償」。ホスト監修:頼朝&藤崎蓮。制作:ABC&テレビ朝日ホリプロ。演出:高橋伸之。第六話。
東京六本木のホストクラブ「Rink」における騒動。新No.3ホストの秀吉(佐藤智仁)は、「銀座の将軍」、銀座のクラブ「牡丹」&和風ホストクラブ「琥珀」経営者の葛城大成(石橋凌)に狙われた挙句、銀座「牡丹」No.1ホステス美波優奈(芦名星)と本気の恋に落ちた中で、兄貴分と慕っていたはずの七瀬公平(佐々木蔵之介)と大喧嘩をして「Rink」から一旦は姿を消した。その際、「ホストの墓場」と称される池袋「GARRARIA」に拾われたが、その店の代表であるサキエル黄川田将也)が公平に挑んだ勝負を見届ける中で公平の心と力を再認識した秀吉は、再び新人として「Rink」へ戻ることを決めた。だが、この騒動の過程で「女を騙す男を許せない」という秀吉の信念に接した公平は、己こそ妻を騙している男ではないかと反省し始めるに至った…というのが先週から今週にかけての話の概要だが、注目すべき点としては、秀吉と公平が互いに影響を受けてそれぞれに変容を遂げた面があることを挙げておくべきだろう。
秀吉は、母が父に捨てられ、しかも多額の借金をも押し付けられるということがあって以降、「女を騙す男を許せない」ということを信念としてきた。だから彼は、公平が妻や子に嘘をついてホストクラブで働いていることを許せないと思った。もちろん彼の怒りを徒に燃え上がらせた背景として、公平の「嘘」のことを知ったときの彼の精神状態が極めて不安定だったことを考慮する必要もあるだろう。葛城大成の卑劣な勧誘に対する反感や、優奈に対する思いから、彼は冷静には行動できない状態にあったのだ。「Rink」を去ったあと、選りにも選って「GARRARIA」みたいな最底辺のホストクラブに移ってしまったのもその所為だろう。とはいえ、たとえ冷静な状態にあったとしても彼の信念は揺るがなかったろう。公平が妻子に嘘をついているのは妻子を不幸にしないためであって、それは女を騙して不幸にすることとは正反対であるということ。それはよく考えると分かり切ったことではあるが、それを秀吉が受け容れることができるためには、「GARRARIA」代表のサキエルとの賭けに公平が圧勝するのを見届ける必要があったはずだ。サキエルの店に莫大な利益をもたらしている得意客の姫(西原亜希)を公平が癒して満足させ、序でにサキエルまでも癒してみせたのを目の当たりにしたことで秀吉は改めて公平のホスト道、「ホストは女を癒すもの」という思想の神髄を知った。そして公平の心に嘘はないことを理解した。
他方、公平はどうだったのか。もちろん公平と秀吉では出発点が違う。家族を守るため、妻を不安にしないためには、当面、ホストクラブ勤務のことを隠しておいた方がよいということを、もともと公平は考えていた。それどころか、想い起こせば彼はリストラの事実さえも隠そうとしていた程なのだ。しかし今や彼は一転、翔児(三浦翔平)や秀吉が止めるのも聞かず本当のことを妻に明かそうとしていた。なぜか。推測するに、たとえ「癒し」のための嘘であるとしても、嘘である限りは既にどこかで裏切りの要素を孕んでいて、ゆえにどこかで本格的に相手を裏切ることにもなりかねないと悟ったからだろうか。嘘をつく者はその嘘をつき通すために色々無理を強いられる。やがて破綻するだろう。実際、公平の娘の織江(山田萌々香)の急病のとき等、妻の桃子(原沙知絵)に不安を抱かせた以上に公平自身が無理を感じたろう。
それにしても、サキエルの店「GARRARIA」の店内の様子は凄かった。とてもホストクラブには見えなかった。店の「システム」は多分、(1)店内に入ると代表サキエルが出てきて、(2)通路の脇にある小窓の向こう側の小部屋にホストたちが並んでいるのを見せて「どれがタイプ?」と訊き、(3)指名の相手が決まれば、(4-1)そのまま店で過ごしてから帰るか、(4-2)暫く店で過ごしてからホテルかどこかへ行くか、(4-3)そのままホテルかどこかへ行くか…みたいな感じだろうか。指名を待つホストたちが着衣だった点に、ああ見えても一応はホストクラブであることから来る節度を見るべきだろうか。接客中のホストの中には上半身裸の者もいた。客の要望に応えたのだろう。