スクラップ・ティーチャー第六話

日本テレビ系。土曜ドラマ「スクラップ・ティーチャー 教師再生」。
脚本:佐藤久美子水橋文美江。音楽:吉川慶&Audio Highs。主題歌:Hey!Say!JUMP「真夜中のシャドーボーイ」。プロデューサー:櫨山裕子&内山雅博。制作協力:オフィスクレッシェンド。演出:佐久間紀佳。第六話。
城東区立第八中学校における生徒会選挙の話。2年D組の久坂秀三郎(中島裕翔)が立候補を表明した。なぜか。選挙を行うこと自体に意味があると考えたからだった。なにしろ、この学校では永らく生徒会選挙なんか行われてこなかったらしい。立候補する生徒もなく、教員たちが適当な生徒をテキトウに選んで決めていたらしい。そのような無責任な無気力な状態で学校が運営されることを彼は嫌った。実のところ彼は生徒会長になりたかったわけではないに相違ない。学校をよくするために何かをやりたいと考える者が生徒会長になるべきであり、そう考える者が他にいなければ自分がやってもよいと意を決したに過ぎなかった。何れにせよ、たとえ立候補者が自分しかいなかったとしても、それでもなお、選挙を行うこと自体が必要であると彼は考えたのだ。それで立候補した。
選挙を行うこと自体が必要であると彼が考えるのは、「学校は生徒と先生が一緒になって作ってゆくもの」であると考えるからに他ならない。前回の話の最後で、2年D組の教諭、杉虎之助(上地雄輔)が高杉東一(山田涼介)と対峙しながら「教師だけの問題かな?学校は生徒と先生が一緒になって作ってゆくものなんじゃないかな?」と問題提起をしたが、図らずも、杉先生を心から信頼し敬愛している久坂は自ら同じ考えに達していた。否、逆だろう。同じ考えを共有できるからこそ、あんなにも信頼しているのだ。
だからこそ、今回の話における杉先生と高杉との間の再度の対峙には重みがあった。なぜなら杉先生は、生徒会顧問をつとめる教諭のジョン崎田(仲本工事)に騙され、また、高須久公(八嶋智人)の「大人になれ」の教えに何となく影響を受け、心ならずも選挙の結果を歪めようとする不正に加担しそうになったのだからだ。それは生徒たちを裏切ることであり、特に、杉先生を心から信頼している久坂を裏切ることに他ならない。
久坂がこのことを知ったら傷付くだろうか。傷付いて杉先生に不信感を抱くだろうか。否、むしろ杉先生に何か重大な事情あってのことだろうかと心配するかもしれない。そして信頼は揺るがないかもしれない。
杉先生に対する高杉の怒りは、久坂のための怒りだったと云ってもよい。そして高杉が去ったあとの杉先生の涙は、不正に加担しつつある己に対する怒りに発するものだったと同時に、生徒たち、特に、信頼してくれている久坂を悲しませるようなことをした罪悪感、「無様さ」に発するものだったろう。
このように、前回から今回へのこの物語の流れ、繋がりは実に迫力を生んだと思う。
久坂と高杉との関係の進展にも注目しておこう。久坂は立候補の表明に際し、「推薦人」として敢えて高杉を指名したのだ。意外な展開に高杉は驚き、断ろうとしていたようにも見えたが、その直後、鉄道と(なぜか)高杉を愛する土屋大輔(新井大輔)が高杉と一緒に推薦人を引き受けたい!と申し出た所為で、高杉には断る暇も与えられなかった。だが、なぜ久坂は高杉を指名したのか。もちろん歩み寄るためだろう。久坂は高杉とも既に友達になったも同然であると思ってはいるが、高杉はそのことを否定し続けている。前回の話の中でもそうした出来事があった。久坂は半ば諦めかけていたのかもしれない。しかし彼の信頼する杉先生は、前回の話における久坂との会話の中、生徒たちからパワーをもらっていると語りながら、高杉をはじめとする転校生三人組も大切な生徒であると断言した。このとき久坂は決意したのではないだろうか。高杉を、何としても仲間に引き入れなければならないのだと。