炎神戦隊ゴーオンジャーGP44

東映炎神戦隊ゴーオンジャー」。
第四十四話「年末オソウジ」。古怒田健志脚本。渡辺勝也監督。
蛮機族ガイアーク掃除大臣キレイズキー(声:竹本英史)からの強烈な反撃を受けたゴーオンジャーとゴーオンウイングスの七人衆とサンタクロース(桜金造)は、三組に分けて投げ飛ばされた。着地した場所は、ゴーオンレッド江角走輔(古原靖久)とゴーオンブルー香坂連(片岡信和)とゴーオンブラック石原軍平(海老澤健次)が、強盗の立て籠もる幼稚園、ゴーオングリーン城範人(碓井将大)とゴーオンシルバー須塔美羽(杉本有美)とサンタクロースが、港、そしてゴーオンイエロー楼山早輝(逢沢りな)とゴーオンゴールド須塔大翔(徳山秀典)が、幽霊の出てきそうな不気味な空間。
走輔と連と軍平の着地した幼稚園では、銃を構えた強盗が園児たちを人質に取っていた。クリスマスツリーを蹴り倒した強盗。怯える園児たち。怒りに燃えた走輔たちはゴーオンジャーに変身した。本来、ゴーオンジャーの力は蛮機族ガイアークに対して行使されるべきものであり、人間を相手に行使されるべきではない(それは警察の仕事である)ということ位は弁えた上で、それでもなお、子どもたちを守るため、敢えて変身したのだ。突然のヒーローの出現に感激の幼稚園教員と大喜びの園児たち。強盗をあっさり捕まえ、警察に突き出した彼等は直ぐにガイアークとの戦闘へ戻った。ヒーローの活躍を目の当たりにできたことは、園児たちにとっては一寸したクリスマス・プレゼントになったことだろう。
範人と美羽とサンタクロースは港の波止場に着地した。無事だったかに見えたが、サンタクロースの袋がなくなっていることに気付いた。三人で探し回っていたところ、ゴミ捨て場にあるのを見付けたが、折悪しくゴミ収集車がそれを持ち去ってしまった。三人はゴミ収集車を追いかけ、ゴミ焼却所の構内のゴミの山の中で探し出すわけだが、それに先立つ場面、サンタクロースが袋の紛失に気付いたとき、美羽がそれを何としても探し出そうとしていたのに対し、範人が消極的だったところには少々違和感があった。範人が袋を探すことに今一つ熱心ではなかったのはガイアークとの戦闘を優先したかったからだが、果たして範人という人物はそういう少年だったろうか。吾等視聴者がこれまで見てきた範人少年は、困っている人を放ってはおけないような「気は優しくて力持ち」の男子だったはずなのだ。なぜ今回はそうではなかったのだろうか。ともあれ、ゴミの山の中からサンタクロースの袋を探す共同作業を通じて範人と美羽は完全に心が通じ合うようになった感がある。
美羽は走輔を諦めるのだろうか。範人は汚石玲奈(及川奈央)を諦めるのだろうか。
早輝と大翔が着地したのは、いかにも幽霊が出てきそうな場所。早輝は少し怖がり、大翔は早輝を守ろうとしたが、やがて本当に幽霊が出てくるや、大翔が怯えて縮こまってしまった。大翔と美羽の須塔兄妹は、幼少時に祖父から幽霊の談をよく聴かされたが、それが余りにも恐ろしかった所為で、今でも幽霊が唯一の弱点になっているらしいのだ。
ここで早輝が大翔を叱咤激励した。「こら!大翔!何しよっと?そいでも男ん子ね?ちゃんと付いちょっとね?オバケが怖くてゴーオンジャーが務まっかいね?」という密かにシモネタ込みの豪快な叱正。これで励まされた大翔は「早輝みたいな妹もよいかもしれない」と云ったが、早輝は「お姉さんなら、なってあげてもよいかな」と応じた。早輝最強伝説と云えよう。今朝の話で最も衝撃的で面白かった局面。
早輝と大翔は襲い来るオバケを全て倒して、ついにその不気味な空間を脱出したが、案の定そこは遊園地の「恐怖のお化け屋敷」だった。料金も払わずに施設内に飛び込んだ挙句、幽霊役の職員に暴力を振るった理不尽な男女カップルという甚だ迷惑な客の図に他ならない。
一見クリスマスの電飾か?と思わせて実は強力な爆弾である器具を街中に仕掛け、一斉に街を爆破し一掃しようとする掃除大臣キレイズキーの恐ろしい作戦。名付けて「年末ジャンボ大掃除大作戦」と云う。これに対し、ゴーオン衆は徐々に勢力を拡大するようにして応戦した。三箇所に散っていたのが合流してゆくという構図こそ、この最高度の盛り上がりを作り出したのだ。全員が勢揃いしたところで「ゴーオン・オールスターズ」の名乗りが来た。こうして「年末ジャンボ大掃除大作戦」は阻止され、街中に仕掛けられた爆弾は爆発の機能を失い、単なる電飾と化して、雪の降るクリスマスの夜を彩った。平和な結末へ向けて畳み掛けるように見所を積み重ね、話を盛り上げてゆく今朝のドラマの展開は、年内最後の放送の回に相応しい。