ラブシャッフル第六話

TBS系。金曜ドラマラブシャッフル」。第六話。
脚本:野島伸司。主題歌:アース・ウィンド・アンド・ファイアー「Fantasy」。挿入歌:バングルス「ETERNAL FRAME」。音楽:神坂享輔&MAYUKO&井筒昭雄。プロデューサー:伊藤一尋。制作:TBSテレビ。演出:坪井敏雄。
上条玲子(小島聖)と逢沢愛瑠(香里奈)との喫茶店における会話の場面に見応えがあるのは、回りくどい言を発しながらもその動機としての一直線の感情を隠し切れないでもいる逢沢愛瑠の揺らぐ現状を、上条玲子が悉く見抜いてしまう仕方が、驚くべく論理的で明晰で面白いからだろう。一見あたかも快楽への欲のみに生きているかに見える上条玲子はその実は、他の「ラブシャッフル」参加者七人の誰よりも醒めて、知性に徹していると見受ける。しかも、あの派手な欲望追求の生活は実のところは夫の上条裕也(尾美としのり)の仕事に関する何等かの目的のための手段として、「仕事」として遂行されなければならなかったらしい。その意味において、「本当は誰にでも簡単に抱かれるような安い女ではない」という宇佐美啓(玉木宏)の直観は、確かに真理を突いていたと実証されたと云えるだろう。
上条玲子の洞察が逢沢愛瑠の思惑や現実を次々に言い当てたとき、逢沢愛瑠は苦し紛れに「セックスの回数と恋愛は別」と反論した。その意は、どんなにセックス経験が豊富でも恋愛の心理を知り尽くせるわけではない!あなたの読みが全て正しいとは限らない!ということだろう。だが、この言を「セックスと恋愛は別」と受け取るなら、それは普段の、快楽追及に徹する人妻「玲子」を演じる上条玲子の主張に一致してしまう。そこが面白い。
宇佐美啓にも動きがあった。彼の提出した辞表は突き返され、逆に部長への昇格が発令された。彼に対して予て解雇の可能性を告げ、先の不祥事に関して叱責して辞表も受け取っていた彼の上司の香川浩介(野村祐人)は、彼の辞意に関して社長であり父親である香川家当主から上司としての管理能力をも疑われる始末だったらしい。このことは何を物語るか。
もちろん愛娘の香川芽衣貫地谷しほり)のため、その婚約者である宇佐美啓の身分を守りたかったからだろう…と考えるのが自然なことだ。だが、もう一つの可能性として、香川芽衣と同じく香川家当主も、彼に潜在する華やかな「スター性」を既に見抜いているのではないのか?と想像してみるのも楽しいことだ。実際、社会的地位のかなり高そうな上条玲子の夫の上条裕也は、彼の恋愛論の演説を聴くや、それが魅力的な、大きな能力であること、しかも自身の就いている仕事において最も必要とされている能力であることを確信していた。兵隊に求められる能力と指揮官に求められる能力は同じではないのだ。