日めくりタイムトラベル昭和30年

NHK衛星第二放送「日めくりタイムトラベル」を夜九時の少し前から見た。今宵の対象は「昭和三十年」。面白い話題が多かった中で特に味わい深く見たのは、麻丘めぐみ報告による「ボディビル流行」の話。
社団法人日本ボディビル連盟の前身にあたる日本ボディビル協会が設立され、同協会の主催するミスター日本ボディビル大会の第一回も開催された昭和三十年。当時まだ中学生だった吉田実という人、雑誌等で見た日本人ボディビルダーの肉体美に驚き、日本人も確り鍛えれば占領軍の米国人に負けないような立派な肉体を実現できることを知って感銘を受け、以来、近所の大人たちと一緒に、空き地に集まり、手作りのバーベルやダンベルで熱心に鍛え続けたらしい。本格的なバーベルやダンベルは当時まだ貴重品で、一部の富裕層にしか手が出せなかったらしく、安価な手作りバーベルやダンベルが流行していたとか。
もう一つ、当時の難問は、戦後十年目の食糧難の時代に、いかにして筋肉の栄養源としての肉(鶏肉・牛肉・豚肉)を摂取するか?にあった。上質の肉は高価で、一部の富豪以外には手が届かなかった。もちろんプロテインなんかない。彼の母上はモツ煮込みを日々作ってくれたらしい。愛情のこもったモツ煮込みでタンパク質を摂取した彼は、十四年後、第十四代ミスター日本に輝いた。そのときに撮影されたに相違ないモノクロ写真に見る二十五歳の彼の肉体は、現代ボディビルダーの、自然の限界を超えつつあるかにさえ見える過剰な肉体とは違い、自然で流麗で美しかった。