侍戦隊シンケンジャー第二幕

東映侍戦隊シンケンジャー」。
第二幕「極付粋合体」。脚本:小林靖子。監督:中澤祥次郎。
先週の第一幕も楽しめたが、今朝の第二幕は、明るく笑える色調の中にも、シンケンジャーとして戦うことの厳しさとともに五人の「侍」たちの個性と魅力を早くも浮かび上がらせつつあって、さらに楽しくなってきた。
しかし先ずは、彼等五人の操る変幻自在の折紙状の武器「折神」五体が「侍合体」を遂げたことで出現した「侍巨人シンケンオー」の、まるで鎌倉時代の大鎧のような、堂々とした姿を賞賛しておこう。
侍合体をする前に、先ずは折神五体で別々に敵に攻撃を仕掛けようとしていたが、行く手を阻まれてしまった。そこでシンケンレッド志葉丈瑠(松坂桃李)は侍合体が必要であると判断したのだ。彼が「折紙だけでは駄目だ。ここは…」と云い掛け、即座にシンケンブルー池波流ノ介(相葉弘樹)が「侍合体ですね?父より聞いております。みんなも知っているな?」と呼応したところで折神の合体が始まったわけだが、実に驚かされたのは、池波流ノ介主導によるその変身によって出現したのが四体の折神を縦に積み上げただけの、何の攻撃力もなさそうな不安定な珍妙な形態だったこと。敵も驚いていた。シンケンイエロー花織ことは(森田涼花)がそれを的確にも「オデン」と形容したのは前半におけるオデンの話を想起させて面白かったが、そのあとの、志葉丈瑠と池波流ノ介との間の「流ノ介、なんだ?それは」「間違ってますか?」「俺余ってるだろ!」の遣り取りは真に傑作だった。この期に及んでも池波流ノ介は間違いに気付いていなかったのだ。
このドラマにおいてシンケンレッド志葉丈瑠は「殿」「殿様」であり、他の四人に対しては主君の地位にあるので、視聴者から見ても今のところは「雲の上の人」のような存在と映る。自ずから他の四人の視点に近付くことになり、ことに四人中で最も饒舌な池波流ノ介を中心に物語を見てゆくことにもなるわけだが、実のところはシンケンレッド志葉丈瑠よりもさらに浮世離れしているのがシンケンブルー池波流ノ介に他ならない。オデン型の侍合体をめぐる二人の遣り取りはそのことをよく表していて面白かった。
志葉丈瑠と池波流ノ介は先週の第一幕でも既に個性を発揮していたが、今朝の第二幕で最も輝いたのはシンケンイエロー花織ことは。五人中で最も頼りなさそうに見えた花織ことはは、「殿様」の無愛想な言動の内の真意と「侍戦隊」の極意を早くもシンケンジャー家臣四人中では一番よく感じ取ることを得て、それゆえに「強かった」。
だが、「殿様」に対して常に反抗的な態度を取るシンケングリーン谷千明(鈴木勝吾)でさえ、「侍」であること、シンケンジャーであることを己の大切な使命として受け止めているという真実がさり気なくも描かれたことも忘れてはならない。今朝の第二幕の前半、近所の公園の林の中で一人地道に武道の稽古に励んでいた花織ことはから「侍」としての決意、覚悟を聴かされて感銘を受けた池波流ノ介が谷千明に対し「聞いたか?あの純粋さを。これが、侍の子だ」と迫ったとき、谷千明は池波流ノ介に対しては「馬鹿!ここまで洗脳されてるなんてカワイソウだろ?」と反発しつつも、感動の涙を流し、花織ことはに「これ、やるよ」と云って、携えていたコンヴィニのオデンの器から串を一本、分け与えようとしていた。
池波流ノ介と谷千明との関係に関して一つ考えておくべきことがある。「殿」への忠義をやたら強調する池波流ノ介に対して谷千明が「あんた、ペコペコし過ぎなんだよ」と文句を云ったとき、「ペコペコではない!家臣として当然の礼儀だし、そういう風に育てられた。おまえたちだってそうだろ?」と反論した池波流ノ介は、「別に」とだけ返した谷千明を「イイカゲンな親らしいな」と攻撃した。これに対し谷千明が「当たってるだけに腹立つんですけど!」としか反応しなかったことで両者の関係が険悪なものに陥らずに済んだと云えるかもしれない。しかし池波流ノ介は谷千明の両親のことについて何を知っているのだろうか?と考えるに、多分、特に何も知らないのではないかと推測する。池波流ノ介は歌舞伎役者の家に生まれ育ったから、「家業」の伝承や「家」の継承のことを先祖代々厳しく教えられてきたはずで、従って個性を家風と直結させてしまう傾向があるのも致し方ない。侍の子として親から教わっていて然るべき「家臣として当然の礼儀」さえも知らないどころか「別に」の一言で流してしまった谷千明を見て、親が「イイカゲン」だったのではないかと疑ったわけなのだろう。要するに池波流ノ介の意図は、「イイカゲンな親の子だから駄目なのだ」と云うことにはなく、「親がイイカゲンだったから子も駄目なのではないか?と疑われては親にまで迷惑をかけることになるのだから、そんな風に思われたくなければ真面目になれ!」と云うことにあったのではないかと解しておきたい次第なのだ。