侍戦隊シンケンジャー第三幕

東映侍戦隊シンケンジャー」。
第三幕「腕退治腕比」。脚本:小林靖子。監督:諸田敏。
予て「殿様」ことシンケンレッド志葉丈瑠(松坂桃李)に対して反抗的だったシンケングリーン谷千明(鈴木勝吾)が、腕を自在に伸ばして攻撃を仕掛ける外道衆が出現した中、「殿様」からの「腕退治」の「腕比べ」の挑戦を受けて立ち、奇策を按じて外道衆に打撃を与えることに成功したものの、その奇策を上回る力を発揮したのが「殿様」の正攻法だったのを悟り、云わば己の限界と主君の真の力量を知って、少し決意を新たにした話。
谷千明はシンケンジャー五人衆の中では最も不真面目のように見えてしまうが、実際には最も常識的な現代人であると云える。封建時代のような主従関係の中で生きてゆくことを唐突に強いられることは、普通の現代人には受け容れ難い。それでもなお、彼は「殿様」からの「腕比」の挑戦を受けて、それを決して疎かにはしなかった。ネットカフェに泊まりながら決して遊びに耽ることはなく、外道衆を退治するための策を練ることに夢中だったのだ。
対する「殿様」志葉丈瑠も真剣だった。同じ夜、月明に照らされた城館の縁側で一人、沈思黙考して外道衆のゲリラ戦を打ち破るための道を探索していた。その物静かな様子が、いかにも若殿らしい気品を感じさせて美しかった。彼は普段よく「折神」と戯れているが、その様子には、心の優しさとともに、君主であることの孤独に一人で耐えようとする武士の「意地」を感じる。
志葉丈瑠がこのように精神において武士であるのに対し、精神よりも言動において大袈裟に「侍」であるのがシンケンブルー池波流ノ介(相葉弘樹)。谷千明が戦闘のあと、「殿様」の力量が圧倒的であることを認めつつも、それを何時かは己の実力で乗り越えたいと思い、そのためにも今後も「殿様」と一緒に闘い続けたいとの決意を明らかにしたとき、心から喜んだ池波流ノ介は大声で高らかに笑ったが、あの笑い方は時代劇における正義の味方の笑い方そのものだろう。