月九ヴォイス第八話

フジテレビ系。月九ドラマ「ヴォイス 命なき者の声」。第八話。
脚本:金子茂樹。音楽:吉川慶&Audio Highs。主題歌:GReeeeN「刹那」。プロデューサー:瀧山麻土香&東康之。制作:フジテレビドラマ制作センター。演出:石井祐介。
今宵の話で唯一味わい深く思われたのは、加地大己(瑛太)が何時ものように大胆推理を披露すべく遺族を訪ねたところ、愛する家族を失った悲しみのゆえに冷静でいられるはずもなかった遺族から拒絶され、追い返された場面。これは当然だ。家族を亡くした直後に、唐突に現れた特に親しくもない人から訳知り顔に妙な話を聴かされること程に苛立つことはないだろう。しかもその相手が、親しくないどころか殆ど面識もなく、警察でもなければ救助隊でもなく単なる学生でしかないともなれば、苛立ちの度は尋常ではなかろう。どこの誰かも分からぬ奴等の、詰まらぬ探偵ゴッコに付き合っていられるものか。そういう遺族の感情も彼には理解できていない。この種の、当然あって然るべき反応が先週までの七話中に見られなかったことこそ奇妙だったと云わざるを得ない。
加地大己は、法医学研究室に運び込まれた今成卓見(平田満)の遺体から肝炎に感染した恐れのある桐畑哲平(遠藤雄弥)を励起しようとして、かつて警察庁科学警察研究所の技官だった今成卓見が最期まで「プロフェッショナル」として冷静にも温かく行動していたに相違ないとの想像を語り聞かせた。なるほど法医学研究室技師の蕪木誠(泉谷しげる)の指導下に既に法医学的な技術知の「プロフェッショナル」への道を歩み始めていた桐畑哲平にとってはその話は何かしら響くものもあったろう。でも、その話を聞かせる加地大己自身が、頓知の天才でしかなく、学知の「プロフェッショナル」からは程遠いのだから説得力がない。学知の神アポローンであれば告げるだろう。汝自身を知れ!と。
取り敢えず羽井彰(佐藤智仁)が桐畑哲平を心から大切に思って心配していたことだけはよく伝わってきた。