キイナ不可能犯罪捜査官第八話

日本テレビ系。ドラマ「キイナ 不可能犯罪捜査官」。第八話。
脚本:田中一彦。音楽:菅野祐悟。主題歌:MiChi「ChaNge the WoRLd」。プロデューサー:加藤正俊&小泉守(トータルメディアコミュニケーション)。制作協力:トータルメディアコミュニケーション。演出:山下学美。
心の中の「時間が止まる」ことを、物理的に特殊な条件を備えた土地で実際に「時計が止まる」ことと関連付けた点に今宵の話の妙味がある。
その場所が所謂「心霊スポット」と化したのはもともとは、その山の所有者が立ち入り禁止の立て札を立てて妙な結界を設定したことが、逆に人々の好奇心をかきたててしまったことにあったが、土地に備わる物理的な条件は、恐怖体験を待望する人々に期待通りの幻影や所謂「超常現象」をさえも見せてしまった上、そこの土地を所有する権力者が結界の奥に隠して風化させてしまいたかったものを、十五年間もの歳月、完全に保存する上にも奇跡的な力を発揮したのだ。腕時計の針を止めてしまえる力を持った土地が、人々の心の中の、永らく止まっていた時間を動かし始めた。そして事件解決の手がかりを提供した物証の一つも、真犯人の権力者が十五年前にそこに落としたまま放置していた腕時計だった。
時効の十日間に突然動き始めた十五年前の殺人事件こそは、警視庁刑事部捜査一課強行犯係長、雅一馬(沢村一樹)の心の「時計」を止めていた事件であり、ゆえに今回は、特別班の春瀬キイナ(菅野美穂)も雅一馬係長とともに行動した。でも、山崎尊(平岡祐太)にも幾つかの見せ場があった。「心霊スポット」での捜査中、何となく不吉な気配を感じて不安になっていたところで調子者の近隣住民に悪フザケで脅かされて、悲鳴を上げてしまったときの恐怖の表情とか。強行犯係の全員で再び捜査を始めたとき、あの職場で唯一の上級職(官僚候補!)であるにもかかわらず健気にも皆のために道具を抱えてきた彼の様子も、冷静に考えて見ると一寸面白い。彼は、数年後にはあの中の誰よりも速く昇進して「偉く」なっているはずなのだが、今や他ならぬ彼自身がその辺のことを忘れてしまっているように見えた。