旅行記三-国立新美術館

五連休の五日目。旅行記三。
朝十時にホテルを退出。御徒町駅から東京駅、大手町駅を経て乃木坂駅へ。六本木の国立新美術館で開催中の「ルーヴル美術館展-美の宮殿の子どもたち」を観照した。
どういう内容であるのかを事前に把握しないで見に行ったのだが、見れば、古代エジプトの彫刻や石碑やミイラ等に始まり、古代ギリシアやヘレニズム、ローマ時代の彫刻や陶器や織物のような、地中海世界を中心とする古代の史料群と、十七世紀から十八世紀にかけてのヨーロッパのバロックロココ時代の絵画や彫刻が展示品の大部分を占め、中世とルネサンスの美術品は少なかった。「子どもたち」という主題の下に幅広い時代の造形表現を取り上げたかに見えて実はそうでもないわけだが、趣旨は興味深いし、内容も楽しめた。国立西洋美術館で現在開催中の「ルーヴル美術館展」に比較すると少々雑多な印象があるので迫力には乏しいかもしれないが、それでもなお、古代から近代に至る造形表現の歴史を概観する中で、考古学と民族学と美術史学とを繋ぎながら「子ども」の問題を考えようとした志を買いたい。
十八世紀の絵画に関しては、シャルダンの「食前の祈り」やレイノルズの「マスター・ヘア」のような名作中の名作が出ている。十七世紀の絵画でも、ル・ナン兄弟の「幸福な家族」、ベラスケスの「フランス王妃マリー=テレーズの幼き日の肖像」等の名作がある。ルーベンスの「レベックを弾く小天使」やシモン・ヴーエの「少女の肖像」等、デッサンも魅力的なものが多かった。古代ギリシアの陶器、赤像式スタムノス「蛇を絞め殺す幼児ヘラクレス」も美麗だった。ゴブラン織「河から救われるモーセ」は二コラ・プッサンの名作を原画とするものであるのが一目瞭然だが、面白いことに国立西洋美術館で現在開催中の「ルーヴル美術館展」にそれが出ている。
見終えたあと、売店に所謂ガチャガチャがあり、やってみたところ、古代オリエントの玩具「台車に乗ったハリネズミ」を模したフィギュアを付けた携帯電話用ストラップが当った。
既に昼二時二十五分にもなっていたので地下の売店の奥の喫茶店に行き、チキン・カレーと抹茶のケーキで昼食。乃木坂駅から日比谷駅、東銀座駅泉岳寺駅を経て羽田空港へ移動し、夕方五時二十五分の飛行機で出立。夜八時頃に帰宅した。