キムタク脳トレ土八ドラマMR.BRAIN第一話

TBS社運開運祈念キムタク脳トレ土八ドラマ「MR.BRAIN」。第一話。
脚本:蒔田光治。音楽:菅野祐悟。プロデューサー:石丸彰彦伊與田英徳。演出:福澤克雄。主演:木村拓哉
脳科学というものが極めて如何はしい技術であり、人間を解明すると僭称してその実は人間精神の最も重要なことの何一つ明らかにし得ないでいることは、例えば河野哲也著『暴走する脳科学」に説かれている。ゆえに、警察庁科学警察研究所技官の九十九龍介(木村拓哉)の「人間とは何なのかを知りたい」という願望は永遠に叶えられないことだろう。
人間を解明するどころか、事件の真相さえも十全には解明できていない。事件の真犯人だった産業開発省土木開発局長の土井健三(高嶋政伸)は一体どのような仕掛けで自宅を爆破したのだろうか?というのは単なる技術的な問題に過ぎないのかもしれない。では、彼の共犯者はどのような集団だったのか。共犯者と見られていた集団は無関係だったが、集団の協力なくしては犯行は不可能だったろう。国土交通行政と経済産業行政を兼ねて担当すると思しい巨大官庁の本庁局長にまで昇り詰めた程の者があのような危険な犯罪に走った理由は多くの企業から賄賂を受け取っていたからだったと説明されたが、談合の禁止によって倒産に追い込まれつつあるそれらの企業を何としても守るべき事情が、高級官僚の彼の側にあるはずもなく(なぜなら官僚の基本は無責任な言い逃れにあるから)、恐らくはそれらの企業の経営者等が八つ当たりで彼の収賄を暴露することを避けるための、保身を図った犯行だったろう。そうであれば真犯人が他にいることになりはしないか。
そもそも彼は一体どうして、被害者の書き残した重要な証拠を塗抹して隠滅しなかったのか?というのは、今さら問うまでもない初歩的な疑問点だろう。しかし山田&上田の「トリック」のような「ゆるい」作風の中では許されることも、このドラマのように一見「ゆるさ」の足りない作風の中では有効ではないと知らなければならない。
ともあれ、このドラマの本分が物語の表現にはなく、高視聴率の獲得にこそあるのは誰の目にも明らかだろう。前座をつとめさせられた「ゴッドハンド輝」に対するTBSの冷遇がそのことをよく物語っていよう。ゆえに、高視聴率を獲得できなかったとき「MR.BRAIN」は無意味だったことになる。取り敢えず仮に視聴率二十%に達しなかった場合は、木下優樹菜トータス・水嶋ヒロに替えて水川あさみ渡部篤郎平岡祐太を起用した方がよいと思う。