赤鼻のセンセイ第二話

日本テレビ系、ドラマ「赤鼻のセンセイ」。第二話。
脚本:土田英生。主題歌:原由子夢をアリガトウ」。音楽:中塚武。チーフプロデューサー:櫨山裕子。プロデューサー:大倉寛子&秋元孝之。制作協力:オフィスクレッシェンド。演出:佐久間紀佳
神木隆之介の美しい成長振りばかりが強く印象付けられ、それしか記憶に残らない感もあるが、話としても、いかにも櫨山裕子プロデュース&小林聡美主演のドラマらしい雰囲気がある。「もし明日が世界の終わりだとしても、私は今日、林檎の樹を植えます」という太川絹(小林聡美)の言明は、いかなる状況でも前向きであるべし!と云いたいのではなく、むしろ、いかなる状況にあっても自分なりの生き方を平然と貫くことこそ幸福への道であると云いたいのではないかと思うが、聴く者を戸惑わせるこの難しい言明が自ずから石原参太朗(大泉洋)を経て和田雅樹(須賀健太)へ伝わってそれぞれの率直な思いを表現するための型と化したのが味わい深かった。
太川絹が病院内では誰にも知られないように密かに淹れていた珈琲を、病院内では自分以外で初めてそれを飲ませる相手として、悩める和田雅樹のために淹れようとしていた場面にしても、浅草で大道芸の劇場を営んでいる実家を捨てて永らく生きてきた太川絹が、唯一この珈琲への愛において、今なお浅草の劇場の父と亡き母と繋がり続けているということを感じさせ、夕陽に照らされた室内の暗さも相俟って内省的に味わい深かった。この独特に長閑な味わいというのは日本テレビのドラマに特有のもののような気がする。この長閑さこそは「もし明日が世界の終わりだとしても、私は今日、林檎の樹を植えます」という信念を表現するものに他ならないと思う。
しかし、もっと色濃く味わい深いのは、八重樫守(神木隆之介)と和田雅樹との間の、互いを心配し合う関係だろう。先週の第一話では、生きることに希望を見出せなくなっていた八重樫守のことを常に心配し、八重樫守を守ることができるのは自分以外にはいないとさえ信じているかのような和田雅樹の姿が描かれたが、今週の第二話では逆に、恋煩いの和田雅樹のことを心配して、和田雅樹のために、大したことはできなくとも少しでも支えになりたいと密かに願いながらも、静かに見守ろうとする八重樫守の姿が描かれた。彼等二人の少年男子の関係の美に比べるなら、和田雅樹の恋の話も印象が薄れてしまう程なのだ(…というわけで冒頭の感想に戻る)。