仮面ライダーディケイド第二十五話&侍戦隊シンケンジャー第二十一幕
東映「仮面ライダーディケイド」&「侍戦隊シンケンジャー」。
第二十五話「外道ライダー、参る!」。脚本:小林靖子。監督:柴崎貴行。第二十一幕「親子熊」。脚本:小林靖子。監督:加藤弘之。
先週の「仮面ライダーディケイド」第二十四話に続く話として今朝の「侍戦隊シンケンジャー」第二十一幕があり、さらに「仮面ライダーディケイド」第二十五話へ続いて、こうして全三話(騒動の発端としての泥棒事件を描いた先々週の両番組を含めれば全五話)にわたった「仮面ライダーディケイド=門矢士の目撃した侍戦隊シンケンジャーの世界」の物語は完結した。
とはいえ「侍戦隊シンケンジャー」における門矢士(井上正大)は、あくまでもシンケンレッド志葉丈瑠(松坂桃李)の居城に仕える大勢の家臣「黒子」の一人として振る舞い、目撃者に徹した。門矢士が目撃したのは侍戦隊シンケンジャーの普段通りの物語であって、無論それは仮面ライダーディケイドの物語ではない。確かに仮面ライダーが存在しなくとも存在する世界だ。だが、それでもなお今朝の二つの物語は一つの物語であり得る。なぜなら門矢士の居候する光写真館の主の光栄次郎(石橋蓮司)と丈瑠のみならず若い侍たち皆の親代わりでもある日下部彦馬(伊吹吾郎)との間の交流が、一つの思いの共有を通して、二つの地平を融合させたからだ。
実際、今朝の「侍戦隊シンケンジャー」の事実上の主人公は、侍戦隊で最も視聴者に近い男子、シンケングリーン谷千明(鈴木勝吾)であり、彼の成長の話が描かれたが、それは同時に彼の無事を祈る彼の父、谷蔵人(菊池健一郎)の話でもあり、しかるに谷蔵人の思いは彦馬や光栄次郎の思いと変わらない。無事に帰ることへの祈りを共有しているからだ。
光栄次郎は居候の門矢士と小野寺ユウスケ(村井良大)と孫娘の「夏みかん」こと光夏海(森カンナ)のために菓子を作り珈琲を入れ、或いは豪勢な夕食を作って無事の帰りを待つ。かつて夏みかんが幼かった頃から彼はそのようにし続けてきた。谷蔵人も、かつて千明が侍戦隊になる前までは、千明の大好物であり自身の大好物でもあるホットケーキを焼いて帰りを待っていた。そして今、彦馬殿が、「殿」丈瑠だけではなく千明をはじめ家臣たち皆の帰りを待っている。高貴の身分であるため本来は自ら厨房に入ることのない彦馬殿も、今回は光栄次郎からクッキーの作り方を教わり、愛する「殿」丈瑠は無論のこと大切な家臣のシンケンブルー池波流ノ介(相葉弘樹)や千明等のためにもクッキーを焼いて帰りを待った。
この点で興味深かったのはユウスケの行動だろう。彼は普段は光栄次郎と一緒に光写真館の食堂で門矢士の帰りを待つことが多い。ところが、この仮面ライダーの存在を必要とはしていない世界にあって門矢士が流石に元気を失っていた中、敢えてユウスケは侍戦隊シンケンジャーに助太刀するため戦場へ走った。仮面ライダークウガとしての彼自身の正義感による行動でもあっただろうが、多分、彼なりの門矢士への激励でもあったろう。この世界に必要とされていない点では彼も変わらないが、それでも、池波流ノ介をはじめ侍衆は歓迎してくれたし、門矢士も丈瑠と心を通じ合わせることを得た。
予言者の鳴滝(奥田達士)は今週も絶好調だった。丈瑠の前に(否、背後に?)出現してディケイド=門矢士の悪口を散々言い触らしていた。なるほど、これまでもあんな調子で色々な世界を巡っては「ディケイドは悪魔」説を唱えてきたのか。それで、他人を疑うことを知らないユウスケは無論のこと、他のどの世界の仮面ライダーたちも門矢士を知る前までは鳴滝の説を信じ込んでいたわけだが、丈瑠は鳴滝の説を信じなかった。流石と云うべきだが、丈瑠の判断を誤らせなかった有利な条件として、鳴滝に遭う前に既に門矢士と出会い、生活をともにしてさえもいたことがあるだろう。門矢士を知る前に鳴滝の話を聞かされていたら少しはディケイドを警戒したはずだ。
御宝マニアのコソドロの仮面ライダーディエンド=海東大樹(戸谷公人)は結局コソドロとしても失敗。門矢士に助けてもらうしかなかったのは致し方ないとしても、彼にとって屈辱的だったと想像されるのは、ユウスケに助けられて怪我の手当てまでもしてもらわなければならなかったこと。「仮面ライダーアギトの世界」ではユウスケのことをあんなにも馬鹿にしていたのに。海東はどんな思いだったろうか?…と考えるに、特に何も気にしていないというのが正解なのかもしれない。