旅行記二細見美術館と京都市美術館
朝十時半頃にホテルから外出。阪急電車で大阪梅田駅から京都の河原町駅へ。駅を出て四条通を東へ進み、東大路通を北上して三条通を過ぎて二条にある細見美術館へ。しかし入館する前に近くのウドン屋で昼食。
今日この美術館へ来た一番の目的が伊藤若冲の「糸瓜群虫図」を観ることにあるのは云うまでもない。昨日は鉄斎美術館で富岡鉄斎によるその模写を観たが、今日はその原作を観ることを得た。素晴らしいことに、鉄斎がこの画に関して認めた書状も併せて展示されていた。近年、若冲に関して世間には大きな誤解が蔓延していて、それは若冲をあたかも「奇想の画家」として「発見」されるまでは永らく忘れ去られていた画家だったかのように喧伝する人が少なくない所為だが、それは史実に反している。世の大概の「天才」は生前から高く評価されるものであり、若冲もそうだった。そして明治以降はさらに評価も人気も高まった(ゆえに贋作も大量に生産された)。若冲を忘れた時代があったとすれば、それは昭和の敗戦後、敗戦国としての日本の古い文化を悉く封建時代の遺物として否定して何もかもを米国流に「民主化」しようとした野蛮の一時期に他ならない。この名画に添付された富岡鉄斎の書状を見れば、鉄斎のような書画の研究家や彼と交流のあった愛好家たちが当たり前のように若冲を評価し愛好していた様子を知ることができる。
細見美術館を出たのは昼三時頃。続けて京都市美術館のコレクション展第二期「作家の一言/見者の一見、美術館での一会」を観照。竹内栖鳳「池塘浪静」や原在泉の「足柄山新羅三郎吹笙図」、望月玉泉「宇治川上流之真景図」、今尾景年「躍鯉図」、上村松園「人生の花」、梶原緋佐子「旅の楽屋」等をはじめ面白い作品が多く出ていた。
館を出たとき少し雨が降り出したが、そのまま東大路通を歩いていたところ豪雨になり、傘を求めるべくコンヴィニを探しても見当たらなくて大いに濡れた。三条通で漸く傘を求めて、河原町通を南下して四条の河原町駅から阪急電車で梅田駅へ。駅の食堂街にある洋食屋で早めの夕食を摂ってからホテルへ戻った。