任侠ヘルパー第三話

フジテレビ系。木曜劇場任侠ヘルパー」。第三話。
脚本:古家和尚。演出:石川淳一
よい意味で「後味の悪い」結末だった。この後味の悪さを生じたのは、渡辺高志(忍成修吾)が祖母を虐待していたのみか違法薬物の売買で生計を立てる犯罪者でさえあったからではなく、渡辺節子(森康子)にとっては彼のみが真に信頼できる唯一の家族だったからに他ならない。ここにおいて、介護事業の成功者である効率主義者の羽鳥晶(夏川結衣)の、「ヘルパーは家族にはなれない」という言は重く響いた。
思うに、このドラマが渡辺高志という人物を虐待者であるのみか犯罪者でもある形に設定したのは、一つには翼彦一(草なぎ剛)や四方木りこ(黒木メイサ)に颯爽とした見せ場を作るためでもあったろうが、もう一つ、もっと重要な目的として、犯罪者である孫の逮捕によって老女から唯一の家族を奪い去るためだったに相違ない。発狂した老女の心身は今後さらに一気に悪化することだろう。しかし介護施設「タイヨウ」には、老女の手足を拘束する以外に対処のしようもないことだろう。虐待者を撃退したはずの者が新たな虐待者になるしかないという不条理。
後味の悪い重い話ではあった中で、所々に挿入された笑い所は効果的で、巧妙でもあった。例えば、四方木りこから散々「小せえ男」と馬鹿にされていた翼彦一は、弟分の黒沢五郎(五十嵐隼士)が頭脳派の六車雅人(夕輝壽太)を「小せえ男」と馬鹿にしたのを、自分のことを云われたかのように思って即座に五郎を殴ったが、もちろん五郎はどうしてそういうことになってしまうのか全く判っていなかった。翼彦一に密かに恋心を抱き始めた様子の美空晴菜(仲里依紗)との二人だけの会話の中で四方木りこが「男の趣味が悪い」と云って面白がっていたのも面白かった。
しかし何と云っても今宵の一番の見所は、虐待に耐える祖母役の森康子と虐待と犯罪に走る孫役の忍成修吾の真に迫る演技にあり、見ていて恐ろしくさえあった。