新番組=オルトロスの犬第一話

今宵からの新番組。
TBS系。金曜ドラマオルトロスの犬」。第一話。
脚本:小林雄次&青木万央。音楽:井筒昭雄。主題歌:滝沢秀明「ヒカリひとつ」。プロデューサー:三城真一&那須田淳&松原浩。演出:加藤新
英雄ヘーラクレースによる十二の功業の一として退治されたゲーリュオーンの牛群の番犬オルトロスはスピンクス(スフィンクス)の父とも云われる(高津春繁「ギリシアローマ神話辞典」)。
ギュスターヴ・モローの名画「オイディプースとスフィンクス」(メトロポリタン美術館蔵)の大きな(原寸大の?)複製品で壁面を飾ったガラス張りの独房に囚われの身の謎の殺人犯、竜崎臣司(滝沢秀明)が、訪ねて来た刑事の長谷部渚(水川あさみ)との一対一の会話の中で、この女が自身の身体についてどのような思いを抱いているかを色々分析して語ってみせる場面での妙に気取った言葉の数々は、舞台演劇の演説風の台詞のように、しかも西欧語からの翻訳のように響いたが、その雰囲気はどことなく、滝沢秀明作詞作曲の歌芝居「愛・革命」を連想させた(「女と男のLOVEと書いて、これを革命と読みます」みたいな感じの)。あの部分の脚本を書いたのは実は滝沢秀明ではないのか?と疑った程だ。
今宵の第一話を見た限り、主人公の竜崎臣司は、触れるだけで病を治す「神の手」(ゴッドハンド)を持つ悪人、対する碧井涼介(錦戸亮)は握り締めるだけで生命を奪う「悪魔の手」を持つ善人…という設定かと今のところは見受けるが、碧井の顔だけを見る限り、この男が善良な人物であるとは信じ難いので、やがては悪に目覚めるのかもしれない。他方、長谷部渚の恋人である吉住正人(忍成修吾)は、いかにも善良な人物に見えるし、もちろん交際中のこの女が既に子持ちであることも全く気にしていない様子であるのもその印象を強調するが、演じるのが今や悪役俳優と称するも過言ではない(昨夜の「任侠ヘルパー」では老人を虐待していた)忍成修吾であるだけに、やがて豹変して子どもにも虐待を加え始めるのではないかと危惧する。取り敢えず確実に云えることは、長谷部渚以上に駄目な刑事は他のどのドラマにも出てこないだろうということだ。数人組の凶悪犯を捕らえるために一人で乗り込んで直ぐに返り討ちにあった挙句、拳銃まで盗まれるとは、無能を通り越して有害でさえある。案外これは笑い所として書かれた場面だったのか?とさえ疑わざるを得なかった程だ。